過去ログ - 安部菜々「笑顔の魔法と月うさぎ」
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51: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:06:57.45 ID:ZY3wZcyuo
アイドルになる。
そんな妄執だけで生きてきた当時の私は、限界の状態だった。
目を閉じても開けても、瞳に写るのは暗闇。
必死にもがいて、消えそうな光に向かって伸ばした腕すら、見えない。
52: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:12:28.95 ID:ZY3wZcyuo
「ステージで踊る卯月ちゃんの笑顔に、ナナは背中を押されました。勇気をもらいました」
もうくじけない、もっと光ると誓うよ。未来に、ゆびきりして。
「最後に……諦める前に受ける事務所はここにしよう。
53: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:20:36.15 ID:ZY3wZcyuo
「えへへ……なんだか、照れちゃいますね。でもうれしいです。
私も憧れてたアイドルみたいに、誰かに夢や希望を与えられてたんですね……」
彼女と私は……よく似ていた。
54: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:26:55.56 ID:ZY3wZcyuo
彼女には……笑っていてほしいと、強く思った。だから。
「これからも、卯月ちゃんのお仕事も恋も、後押しできたら……なんて」
さあ、笑わなきゃ。
55: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:37:46.27 ID:ZY3wZcyuo
緩やかな沈黙が、流れた。
ひとまず、夕飯の準備をしようかな……と思っていると、畳に置いていた携帯が震えた。
「あ、ごめんなさい卯月ちゃん、電話が……」
56: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:41:33.84 ID:ZY3wZcyuo
「……もしもし、ナナです」
「こんばんは、菜々ちゃん。卯月です」
部屋の中からと電話から、ステレオになって届く卯月ちゃんの声。
57: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:52:09.51 ID:ZY3wZcyuo
「凛ちゃんは、すごいんです。
美人で背が高くて、歌も上手でかっこよくて……私、憧れてたんです」
渋谷凛……彼女は公私ともに、卯月ちゃんの一番のパートナーと言ってよかった。
58: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 01:57:08.01 ID:ZY3wZcyuo
「えっと……無理に凛ちゃんを目指す必要は無いんじゃないですかね?
卯月ちゃんには、卯月ちゃんの良さがあるんですから」
「えへへ、ありがとうございます。
プロデューサーさんもファンの方も、私の笑顔を褒めてくれて……うれしかったんですよね」
59: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 02:00:52.87 ID:ZY3wZcyuo
「あのステージで、みんな一緒に歌ってわかりました。
私達はもう、アイドルっていう同じステージに立ってたんです」
電話を通して、卯月ちゃんの感情は言葉になって流れていく。
絡まりあった糸をほぐして、一つの絵にするように。
60: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 02:06:38.78 ID:ZY3wZcyuo
「菜々ちゃん。私と、本気で戦ってくれませんか?」
驚いて、携帯を落としかける。
卯月ちゃんは、まだ目を閉じているようだった。
61: ◆0vdZGajKfqPb[saga]
2014/04/15(火) 02:16:30.47 ID:ZY3wZcyuo
あの日。
それがどの日かなんて、聞くまでもない。
プロデューサーさんへの私の想いが、喉から溢れでてしまった日。
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