205:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/06/30(月) 08:53:39.06 ID:aFMIt3ru0
「はぁっ……はぁっ……!」
息が切れる。
足がもつれる。
心臓が早鐘のように高鳴る。
「はっ……く、はぁっ……!」
まだまだ気温の低い朝だというのに、どんどんと滲み出てくる汗。
朝食を入れていない胃がきゅうと縮こまり、吐き気が込み上げてくる。
「はあっ、はあっ、はっ……!」
それでも、荻原結衣は歩き続けーー
「うっ……わあぁっ!?」
木の根につまずいて、地面に手をつきながら倒れたところで、ようやくその足を止めた。
「はぁっ、はぁっ……痛ったぁ……」
掌を見てみると、泥の向こうに僅かながら赤色。
どうやら、擦り剥いてしまったらしい。
「ああもう、やっちゃった……」
ぬかるんだ地面に突っ込み、泥だらけになってしまった手をブルブルと振るう。
制服が汚れなかったことは不幸中の幸いだが、とても少女はその幸運を喜ぶ気にはなれなかった。
それよりも、早く歩かねばと、再び立ち上がるべく足に力を込める。
「っ……!」
しかし、歩き続けた体は低い木の根に引っかかるほど限界で、休憩を挟まねば動けないと訴えかけていた。
仕方なしに、なるべく濡れてない木の膝元に腰を落ち着け、息を潜めながら周囲を伺う。
「もう、大丈夫かな……?」
先ほどまで追いかけてきていた人影は、もう見当たらない。
耳を澄ましてみても、聞こえてくるのは自身の鼓動の音ばかりで、それ以外は草木が風に擦れる音だけ。
それでようやく、少女はホッと息をついた。
「なんだったんだろ、あの人……」
膝を抱えて縮こまりながら、結衣が先の出来事を思い出す。
ウトウトとしていた中、突然にPDAが鳴り出し、ステージがどうこうと意味不明なアナウンスを聞かされたのが昨夜。
それから、不安を胸に一人で夜を明かしていると、唐突に山小屋が襲撃された。
もちろん、一人取り残された結衣に迎撃する手段はない。
暴力に取り付かれたような怒鳴り声と足音に、半ばパニックになりながらも、辛うじて山小屋から逃げ出した。
一応ながら練習した銃も、逃げ出すにはただの重りでしかなく、とても持ち続けてなどいられなかった。
余計な荷物は全て捨て、ただひたすら、見えない恐怖から逃げるために一晩中走りーー後に歩き続けた。
「……何が起こってるの?」
結衣の記憶が確かならPDAの音声は、クリア条件が変更されたと言っていた。
どうしてそうなったのかは、よく分からない。
ただ、何か途轍もなく重要なことが起きてることは、何となく理解していた。
「悠奈さん、早く帰ってこないかな……」
悠奈がいてくれれば、誰かに襲われたとしても守ってくれる。
「修平くんも……戻ってきてくれないかな……」
悠奈と共に、修平や琴美も来てくれれば、まさに鬼に金棒だろう。
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