29:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/15(火) 07:59:32.08 ID:fX5a1w8N0
くつくつと蓮井未久(女子十三番)が笑い、その隣で阪本遼子(女子八番)が頬杖をつきながら呆れた表情を浮かべていた。
「阪本さんも、圭にやってあげたら?」
英隆が意地悪く言うと、遼子は顔を真っ赤にした。
「はぁ!? 意味わかんない、何であたしが横山にそんなことしなきゃいけないの。
熱いおでんなら突っ込んでやっても良いけどさ」
「どっかのお笑いタレントか!」
遼子の後ろでツッコミを入れたのは、遼子の相手役に挙げられた横山圭(男子十八番)、遼子とは9年連続同じクラスの腐れ縁だという。
9年連続クラスメイトということもあり、2人は言い争いを続けているのだが、それは息がぴったりの夫婦漫才のようにしか見えず周りはそれを見て笑っている。
「横山テメェ水汲んだら戻ってこいよ」
「そんなの両手に持って喧嘩して、零しても知らないぞ」
離れた場所から圭を呼んでいるのは、いつも圭と一緒にいる原裕一郎(男子十三番)と宍貝雄大(男子八番)だ。
特に裕一郎は圭とはサッカー部で同じポジションを争ったライバル同士ということもあってか日頃から口喧嘩が絶えず、今も圭を睨みつけている。
それでも一緒にいるというのは、雄大がいつも間に入って仲裁してくれるということもあるだろうが、何か通じるものをお互い感じているのだろう。
早く優人と迅のところに戻らなければいけないと思い、背中に遼子と圭の声を浴びながら卓也と英隆は外に出た。
優人と迅のいるベンチには先客がいた。
「…顔色悪っ」
「バス酔いかぁ、お気の毒ねぇ」
「あ、カリカリ梅ならあるよ、これ食べたらすっきりしないかな、迅!」
財前永佳(女子六番)、湯浅季莉(女子二十番)、水田早稀(女子十七番)のギャルグループの面々だった。
永佳は卓也の顔を見ると、ふいっと顔を背けた。
永佳とは彼氏彼女の関係なのだが、永佳は人前では絶対に卓也に寄り付かない。
卓也の周りはそれを変だと言うが、人前で寄り付かないのも悪態付くのも全て永佳の照れ隠しなのだ。
季莉と早稀も永佳のそんな性格をわかっているので、永佳と卓也を交互に見て苦笑を浮かべるだけで、せっつくような真似はしなかった。
ちなみに英隆は永佳とも幼馴染なのだが、永佳は邑子のように英隆に対して親しげに話しかけたりはしないし、英隆もそれに対しては何も言わず、どこか余所余所しい。
青白い顔をしている迅の彼女である早稀は、リュックからカリカリ梅を取り出した。
早稀は無類のお菓子好きで、初等部の頃に遠足で“お菓子は300円まで”と決められた中でも大量のお菓子を持ってきた上に、教師に注意されると真顔で『飴は喉が痛くなった時に痛みをマシにするためのお薬だし、ガムとかグミは噛む力を鍛えるものだし、バナナは果物だし、ビスケットは動物にあげるエサだから、お菓子じゃないです』と言い放ったつわものだ。
「早稀ちゃん、俺には?」
「えーあたしの大事なおやつをどうして優人なんかにあげなきゃいけないのー?
1個は迅のでしょ、もう1個はあたしのだもーん!」
「そんご無体な…!!」
凹む優人を見かねて、迅は溜息を吐いて早稀の手からカリカリ梅の入った袋を取り、1つを優人に手渡した。
そしてもう1つを自分が齧った。
「ちょっと迅、あたしの…――ッ!」
批難の声を上げた早稀の口に、迅は自分が齧ったカリカリ梅を入れた。早稀は目をぱちくりさせていたが、何が起こったのかを理解すると頬をぽっとピンク色に染めた。
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