439:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/08/23(土) 07:06:07.97 ID:7vd1UyS70
年配の兵士、笠井がそう声をかける。その言葉に反応するかのように栗井孝は首だけ動かして、笠井の方を向いた。たった今荒川良美(女子1番)の死亡報告書を書き終えたところばかりだ。思わず心の中でチッと舌打ちをする。
はっきりいって迷惑だ。現在AM05:30。もうすぐ第一回の放送。今からその為の準備をしなくてはいけないのに、この電話のせいで作業が滞る。大体こんな朝早くかけてくるなんて、どこの早起きの暇人だ。こんなことで電話するより、もう少し国をよくするために政治の勉強でもしたらどうだ?
そんな心に浮かぶ文句を、頭の隅に押しやり黙って電話を受け取る。こいつのこともいささか気に食わないが、今怒鳴ってもただの八つ当たりだ。
「はい、栗井です。」
「おぉ、栗井君か!担当官の職務はどうだね?」
ええ、大変気分が悪いです。何回やっても慣れません。一体何の為にあるのか、総統とやらに直接会って聞きたいものですね。戦闘実験なんて、ただの言い訳ですよね?こうやって先の未来を担っていく中学三年生の命が散っていくのを、安全な高台から笑って見学していて何が楽しいんですか?ホント、この国の政治家って腐ってますよね。
洪水のように流れ出る、文句というより罵倒するような言葉をギリギリのところでせき止める。どうやら思っている以上に不機嫌らしい。腐っていても教育長。言葉には気をつけなくてはいけない。萩岡宗信(男子15番)に軽率なことをするなと言っておいて、自分が軽率なことをしてしまっては、人のことはとやかく言えない。
「まぁ何とか。しかし慣れないものですね。何せ初めてのケースなもので。」
「無理もないな。プログラム前から担当クラスに担任として配属されるなんて、あまりないケースだからな。」
本来ならば、担当官はプログラム開始時に生徒と始めて対面することになる。しかし今回は、新学期開始時から担任として赴任しているのだ。メリットとしては、生徒の普段の行動を間近に見ることができるため、トトカルチョの為の資料を詳細に作成できること(これもかなり気の進まない仕事だった)。あとは、プログラムに参加が決まったクラスの担任には、政府に刃向かって命を落とす人間も少なくない。その無駄な仕事を減らす為でもあった。
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