過去ログ - 日向「強くてニューゲーム2」
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441:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/08/23(土) 07:07:35.80 ID:7vd1UyS70
 ただ、自分にはどうしても矢島がただクラスメイトを殺して回っているように思えなかった。宮前を殺した時にしたって、相手が分かってから引き金を引いている。もし無差別に[ピーーー]のだったら、物音をした時点で攻撃しているはずだ。おそらくいじめた不良グループ(しかしその中で、加担していなかった内野翔平(男子1番)のことはどうなのかは分からないが)のみ対象をしているのではないかと考えていた。もちろん仮説にすぎないのだが。

 

「まぁこれから朝になるし、他にも動く生徒が出てくるだろう。担当官という職務は大変だろうが、名誉ある仕事だからな。しっかりやってくれ。」

 

 心の中で溜息をつく。大体、名誉だなんて一回も思ったことはない。必死で生きようをしている子供たちをただ観察し、それをまとめて本部に報告する。それのどこが名誉なのか聞きたいくらいだ。個人的に言えば、この国におけるどの仕事よりも汚れた職務だと思うくらいなのに。

 けれど、敢えてこの仕事を選んだ。悲惨ともいえるプログラムで、自分なりにもがいてみたかったから。そう、今プログラムで必死にもがいている、沼川第一中学校の三年一組のみんなのように。

 

「そろそろ第一回目の放送の時間ですので、すみませんがこの辺で失礼します。」
「おぉ、忙しいところすまなかったな。では頑張ってくれたまえ。」

 

 迷惑だと思うくらいなら初めから電話してくるなよ。そう思ったが、その言葉ものみ込んだ。「失礼します。」そう一言そえ、ゆっくりと電源ボタンを押し電話を切った。切った途端、疲れがドッと押し寄せてくる。まったく、馬鹿を相手にするほど疲労感のたまることはない。しかし休む時間はない。今の電話で大分タイムロスしてしまった。急いで準備しないと―

 

「あの…、担当官…。」

 

 おずおずといった感じで<後ろから声をかけられる。まだ機嫌が悪かったせいか、いささか眉をひそめたまま振り向いた。そこにはまだ若い、二十代くらいの兵士が両手にカップを抱えて立っている。こちらの顔を見て、少々びっくりしたのか一瞬表情がこわばっていた。

 

「あの…、よろしかったらコーヒーをどうぞ。」

 

 大事そうに抱えられたコップの中には、真っ黒な液体がわずかに波を立てている。湯気は出ていないところからして、アイスコーヒーのようである。中々気がきく兵士だ。このくらいの気遣いを、さっきの教育長にも求めたいところである。

 

「あぁ、すまない。ありがとう。」

 

 カップを受け取ると、口をつけてコーヒーを流し込む。どうやら喉が渇いていたらしく、一気に飲みほしてしまった。気分がシャキッとする。さすがはブラック。目覚め効果はばっちりのようだ。

 

「すまないが、もう一杯もらえるかな?」

 

 そう言って差し出したカップを、「はい!」と兵士らしいキビキビとした返答で答える。その表情は、少しばかりホッとしているように見えた。まぁ一般の兵士から見れば、担当官なんて人間は雲の上の存在に近いのかもしれない。誰でもできる仕事ではないし、皮肉なことにそこそこ偉い立場である。


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