139: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/20(日) 01:10:06.32 ID:uoXohu1B0
と、不意に力が抜けた。扉がスライドして大きな音を立てる。開いたのだ。
それは場にそぐわぬ幸運だったけれど、逆に怪しい。彩人の能力下で扉が開くということは、果たしてそれが不幸だという証ではないのか?
それでも仕方がない。崩落に巻き込まれるわけにはいかない。破壊的な音を響かせている背後から脱出し、廊下で膝をつく。
地震は過ぎ去ったようだった。静かなものだ。まるで全てが幻想だったかのように。
だからこそ振り向いた。手抜き工事だったのだろうか、不自然にその一帯だけが歪み、崩れ落ちている。あまりにも「不幸なこと」に。
会計「どういうこと、かしら。調べてくれる?」
腕章「やってる。……はぁん、なるほど」
会計「ちょっと、勝手に納得しないでくれる?」
腕章「二人、戦ってる。彩人ともう一人の闖入者。効果圏内から彩人が離れていってるわ」
効果圏内――確かに今、新聞部は効果圏内と口にした。それは私がかねてから考えていたことと一致する。
彩人の能力は決して無限大でも無尽蔵でもない。地球の裏側にいる私たちに効果を及ぼしたりはしない。
恐らく、視認できる範囲。近づくにつれて私たちの身に降りかかる不幸も並はずれたものに深化していく。
会計「誰が戦ってるのかは?」
腕章「残念ながら、そこまでは」
本当に残念そうに言った。どうにも演技には見えない。
とはいえ、一応ポーズとして尋ねはしたが、私は知っている。闖入者の正体を。
うまくやって頂戴、『弱肉強食』。
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残り六人
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