184: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/22(火) 14:13:46.49 ID:BKn3hKU/0
彩人「は」
彩人は笑った。口をぽかんと開けて、馬鹿みたいな顔をして、笑っていた。
私は知っている。人間、どうしようもなくなると、どうしていいかわからなくなると、笑うしかないんだってことを。
彩人「は、ははは」
弾丸は出ない。いくら彩人が引き金を引いても。
会計「弾切れ、よ」
彩人「な、なんでこんな――!」
彩人「こんな、『運の悪い』こと!」
そうだ、まさしく彼女は「運が悪かった」。
賭けだった。残弾など私にはわからない。そして、恐らく彩人にも分からないだろう。彼女はけれど確信していたはずだ。自分は運がいいから私を殺す前に残弾がなくなることはないだろう、と。
もしくは、残弾がなくなる前に私を殺せるだろう、と。
その驕りを衝いた。
狂乱している彼女の脚を引っ張れば、たやすく無様な声を出して地面に倒れこんだ。そうして私は、なんとか体を引きずって、無理やり彩人の上に乗る。
全身全霊で体重をかけて、とりあえず彩人の顔面を一回殴ってみる。
そしてついに、私に不幸は降りかかってこない。
鼻血で真っ赤に染まる顔面を拭うことすらせず、彩人は噛みつくような姿勢でこちらに詰め寄ってきた。
彩人「なんで! 今日は、最高の日だったはずなのに! 一年で一番の幸運で――!」
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