205: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/23(水) 12:11:10.17 ID:VukTWdSA0
詰襟「なら、待てばいいのか?」
ムム「それもたるいよね。観客も、飽きるだろう。ボクたちも時間を跳躍するよ」
と言うが早いか、世界が一瞬ぐるりと回転し、外は夜の帳に包まれている。
ひんやりとした空気が頬を撫でる。汗が急激に冷えて体がぞくりとした。
……いや、ただ汗が冷えたからだけではないのかもしれない。冷えたのは恐らく、肝。時間跳躍を軽々行える技術力は、これまで数多の殺し合いを経験していたとて、なお信じがたい。
僅かに歩くと、街灯に照らされる中で、人間が倒れている。
会計「あぁ、あなたなのね。おめでとう」
地べたに「時は金なり」が倒れていた。
両足が潰れている。腹に穴が開いている。生きているのが不思議なくらいの重傷で、事実余命は幾許もないのだろう。彼女の瞳は焦点が合っていない。霞んで、澱んで、光が失われつつある。
僅かに離れた位置に彩人。結局最後まで洋と知れない奇人だった。こちらは外傷こそないがぴくりとも動かない。理由と手段はどうであれ、「時は金なり」が勝ったのだろう。
会計「ごめんなさいね。最後に私のこと殺してくれない?」
唐突な申し出だった。わからない、とは言わない。最早彼女は死を待つのみだ。ならばいっそ一思いに楽にしてやるのが正しい道ではないのかと思った。
会計「走馬灯を見るって言うじゃない。人間、死ぬ前に。私それっていやなの。どうして死ぬ間際に追い打ちをかけられなきゃいけないのよ」
彼女にそこまで言わせるものが何か、俺はなんとなく心当たりがあった。時は金なり。いくら金を積んでも惜しくない、買い直したい時間が彼女にはあるのだ。
一目見たときからなんとなくそんな雰囲気はしていた。嘗て新聞で見た名前と顔。時任一時。
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