223: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/29(火) 17:17:32.77 ID:5HLYTs2y0
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「もしもし? 『門外不出』さんですか?」
あらかじめ聞いていた電話番号は留守電になっていた。一応それにメッセージを吹き込むだけ吹き込んで、私は通話を終了する。
「どうだった?」
「ふむ。出ぬようだ」
オフ会の主催者にそう告げる。三十歳くらいの人当たりのよさそうな男性は、頭を掻きながら「困ったなぁ」。
「仕方があるまい。先に行こう」
今日はオンラインゲームのオフ会なのだった。私のハンドルは当然「ブリュンヒルデ・ノワール」。
メンバーは全部で八人。本当なら新人の「門外不出」さんも参加する予定だったのだけど、遅刻なのか欠席なのか、まだ来ていない。電話も通じない。
それにしても、今どき固定電話ってのもないと思うけどなぁ。
とりあえずカラオケ――と、そういう流れになっている。やっぱり同じ趣味を共有できている人たちの会話は、楽しい。クラスメイトなんていらなかったのだ。
でも、ここは休日のアーケード。あの無知で蒙昧なクラスメイトと出会わないとも限らない。もし出会ったら、いやだ。きっとあいつらはこっちの都合なんてお構いなしにやってきて、リアルをぶっこんでくるに違いない。
「それにしても、『ブリュンヒルデ・ノワール』って、あれだよね? 漫画の」
「あ、はい――じゃなくて、うむ。漆黒の剣士、ブリュンヒルデ・ノワール」
「俺もあれ読んでるよー。四巻の裏表紙のさぁ」
「あれいいですよね! じゃなくて、あれはいいものだった」
等等。
こんな有意義な会話もあまりない。
きっと私の世界の中心は、こういうところにあるのだろうなって思った。
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