226: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/29(火) 17:19:32.90 ID:5HLYTs2y0
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「大丈夫でした?」
駆け寄ってきた有田は眼鏡の奥の瞳を心配そうに輝かせた。わたしってばよくやったでしょう――そんな態度が透けて見える。
「……お前、褒めて欲しいのか?」
「なっ! わたしは先輩が絡まれてたから助け舟を出しただけでですね――!」
どうやら自意識過剰らしかった。反省しておこう。
「……ありがとうな」
「え? いや、別にいいですよ。先輩には休みが明けたら図書室の整理をしてもらわなきゃならないんですから」
「あぁ、そんなことも言ってたな……」
「はい。有言実行です」
「有言実行か」
俺は有田を見た。ショートカットの眼鏡。頑固な女。俺はこいつに何かを言わなければいけないような気がしていて、けれどその源泉を見つけられないでいる。正体がわからないでいる。
「有田」
「はい?」
「ありがとうな」
よくわからない顔を有田はした。もしかしたら俺もそんな顔をしているのかもしれないが。
それでも有田は疑問符を飲み込んで、花の咲いた笑顔を俺に向けてくる。
「どういたしましてっ!」
<了>
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