71: ◆yufVJNsZ3s[saga]
2014/04/18(金) 01:03:46.45 ID:9NO0r5n60
と、あたしはそこで、自分が門の内側にいることに気付いた。
気づいてしまった。
と言うべきだったかもしれないけれど。
門は大破していた。自動車によって。だから、あたしが足を踏み入れることは難しくはない。
けれど問題はそのあとなのだ。あたしの推論が間違っていなければ、ここには――ここにも、能力者が。
ふと屋敷を見上げれば、窓の奥、僅かに開いたカーテンの隙間から、こちらを見ている人影があった。思わず猟銃を上げると、その人物はさっと屋敷の奥へと消えていく。
見られている。
はっとした瞬間に走り出していた。行く当てなどなくても、じっとはしていられない。
ぼうぼうに伸びた草を踏みしめて走る。左耳はその音が聞こえているけれど、右耳はいまだ不完全。午前とは違って耳栓をしていないからだ。
木陰で立ち止まってあたりを窺う。さすがに野次馬も屋敷の敷地内へとは入ってこなかった。もしくは、入れないだけなのかもしれなかった。
そう、あたしは入れる。入れた。事実として。
これは何を意味しているのか……簡単だ。都市伝説が本当なのであれば、家主があたしを招き入れたからに他ならない。理由は、それこそ考えるまでもないだろう。
腕章「簡単に殺されたりはしないけどね」
あたしの能力は戦闘向きではない。だから、とにかく逃げることに専念しなくちゃだめだ。わかってる。うん、思考は明瞭。オーケー。
逐一平静の確認を取って、あたしは硝煙くさい袖で顔を拭った。
この敷地内に入れないのと同様、この敷地内から出られない可能性もある。それは当然いずれ試すつもりだったが、まずは現状の確認からで問題あるまい。
幸い、まだ敵に動きはないようであったし。
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