過去ログ - モバP「見えた今に絶えぬ未来を」
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11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 22:57:50.37 ID:dbLyof+Po


 だが、昨日と今とで顔を合わせているにも関わらず、打って変わって態度を変化させてそこまで言い詰めるのはどういう意味なのだろうか。
 今もなお見えぬ彼女の本意にただ困惑していると、千秋は先程よりも――日常で見られるものではない、ずっと真剣な表情で俺に冷たく言い放った。
「だったら、何故あなたは自分の担当の子すら見てやらないのかしら。あなたにとって……翠さんはただの練習台とでも言うつもり?」

 息が整えられはっきりと述べた彼女の言葉は、綺麗な顔からは感じられない憤怒の意思が見えた。
「は?」
 突然の言葉に、無意識に不躾なパードゥンが漏れ出てしまう。社会人としてはあるまじき返事である。
 しかし、そんなことを改めようという気すら起きない程に彼女の言葉には賛同できなかった。同時に、彼女の言っている意味がいよいよ理解できたのだ。

 隣のちひろさんが心配そうな雰囲気を醸し出す中、千秋の鋭い視線を真っ向から叩き切るように見つめる。
「らしくないな。いくら何か意見があるとはいっても、俺相手だからといって言って良い事と悪い事があることぐらいわからないのか?」
 これだけははっきりと言える、彼女は俺を蔑んでいると。侮蔑や失望と言い換えても構わない、そんな憎悪にも似た感情が彼女の美しい瞳から感じ取られた。
「そんなこと、知らないはずがないじゃない」
 だが千秋は全く意に介さず俺の言葉を切り捨てる。まるで目的以外の思想には全く興味が無いとでも言いたげな声色である。


 別に彼女の言葉にいきりたって殴りかかろうとした訳ではない。
 黒川千秋が何も夜にわざわざ俺の前に来て理不尽に怒鳴りたいわけではないという事は、彼女の出で立ちや立ち振舞、そして性格や行動を見れば明らかだ。
 ただ言葉を解すれば、不思議な縁あって同じ担当プロデューサーに付き、そしてユニットを組んだというきっかけで知り合い、身近になっていた俺の担当アイドル……水野翠について、何かを伝えに来たのだろうということは汲み取れよう。

 沸騰石を入れ忘れたフラスコにかけている火を穏やかに消し止めながら、千秋との会話を咀嚼してみる。
 彼女は俺に対して刺のある言葉を吐いた。それは何故かといえば翠の意を俺がちゃんと受け止めていないからというのだ。
 故に翠を人形のように扱っている、と彼女は遠回しに伝え、俺に何かをさせようとしているのである。




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