過去ログ - モバP「見えた今に絶えぬ未来を」
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/04/22(火) 23:12:59.38 ID:dbLyof+Po


 ――あれは何だろう?

 どうして返事をしようか、と彼女から視線を外すと、ふと翠の膝元に何か小さなノートが落ちていることに気づく。
 青色のノート。遠目に見ただけでもそれが汗や指圧で表紙がねじ曲がっているのが分かる。
 翠の出で立ちを見れば彼女がここで練習をしていたことはまず間違いない。
 ならば彼女の練習のメモ帳と考えるのが妥当な所だろうか。

 今のところ翠がその落ちているノートに気づいている様子はなく、置いているのではなく落ちているのだと改めて理解する。
 なら、それを取って渡すついでにさりげなく普段のメモ帳を少し覗かせてもらおう、と俺は考えた。

 勝手に覗くのは問題があるのは当然だが、練習用のメモ帳であればレッスンの疑問点などが記載されていてもおかしくはない。
 普段からこと練習に対して自身で解決しようとする翠だから、多少強引にでも見てやるほうが彼女としてもやりやすいだろう。

「ノートが落ちてるぞ。ほら、これ――」
「やっ、それは……っ!?」
 ある程度の言い訳を考えつつおもむろに手を伸ばし、彼女の膝元へと指を向ける。
 それにつられて彼女の視線が誘導され、ようやく翠が落ちているノートに感づいた。

 ここで翠が仮に俺にノートを拾われて礼を言ったり謝ったりする程度であれば、俺はそのまま何事も無くシミュレートしたルートへと舵を切っていたのだろう。

 しかし、ここでも彼女は違和感ある行動を取る。
 俺がその小さなノートを手にとった瞬間、彼女は人が変わったように慌ててそれに手を伸ばしたのだ。

 まさか奪わんとするような勢いでノートを受け取るとは思ってもおらず、彼女の手が触れたことでノートは勢い良く弾け飛んでしまった。





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