30:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/04/25(金) 22:44:45.13 ID:XsXwgu560
「それなのに……それなのにボクは……くぅうう」
止まれと、何度も心の中で叫んだ。自分に涙を流して同情してもらう資格なんてないのだ。プロデューサーは常に最前を尽くしていた、その実感が確かにボクにはあって、それと比べて思い返せばボクはなんども仕事を失敗していたのだから。
よしんば、与えられた仕事を完璧にこなしたとして、けれど結果が追いつかないのであれば、つまりそれはボクの責任なのだから。
ボクは知っていた。
中途発表の時の結果に、少なからずの――いや、大きな期待を胸に本結果を見たプロデューサーが、一瞬だが確かに表情を曇らせていたことを。
ボクは気がついていた。
それをボクに悟られまいと、その後ずっと明るく振舞っていたプロデューサーに。
ボクは見てしまった。
悔しさに涙を流すボクを慰め、寮まで送ったその後で、プロデューサーが一人事務所で涙を流していたことを。
後悔とは、とても厄介なものだ。先に立たないモノだから、決して対策を講じることはできず、たいていの場合は予想だにしない形で、ボクの心に楔の様に突き刺さる。
今回ボクに突き刺さったそれは、今までで一位二位を争う規模で、だからボクはこんなにも苦しんでいる。
俯いていた顔を上げようとする、逃げる事をやめようと思った。
きっと、顔を上げればそこには怒りの表情を浮かべたプロデューサーが――いや、もしかすれば悲しみの表情かもしれない、どちらにせよ、ボクの見たくない、ボクが見たかったのとは逆ベクトルのそれがそこにあるのだろうと思った。
――思ったら、怖くなってやっぱり顔を上げられなかった。
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