過去ログ - 【モバマス】「きみがいたから」【結城晴】
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6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/03(土) 21:03:51.00 ID:3dnvgWSh0
「アイドルぅ?」

 変な声が出たよ。

「そう……。だけど……お仕事……ずっと……お休みしてた」

「へえ……」

 今、オレと佐城は、花壇のふちに横並びになって、帰宅する生徒を見送ってる。

 例の白猫は、オレたちの足元で、コンビニ袋の上にあけた猫缶を食べてるよ。

「休んでたってことはさ――……ん」

 考えなしなことを言おうとして、オレはいったん口を閉じる。

 なんつーか、この話題はさ、適当に話すべきじゃないって思ったんだ。

 オレにも似たようなこと、あったからさ。

「オレはサッカーが好きなんだけどさ、試合やってると、思い通りになんて全然いかないんだよ。もし完璧に動けたら、絶対にボールを取られないし、いくらでもゴールネットを揺らせるだろ?」

 佐城が不思議そうに首を傾げる。

 体を動かすタイプには見えないし、言われてもぴんと来ないのかもな。

「試合時間のほとんど……ひどいと最後までずっと、うまくいかねぇー! ってなるんだよ。自分が情けなくて、悔しくて、ちくしょう、もういい! って投げ出したことが昔にあってさ。子どもみてぇだろ?」

 佐城は体ごとこっちを向いて、すげぇ真剣に話を聞いてくれてた。

 たいした話でもねぇのにさ……オレが何を言おうとしてるのか、頑張ってくみ取ろうとしてるんだ。

「でも結局、オレはサッカーに帰ってきたんだ。佐城は経験したことないかもだけどさ、うまく相手を抜いて、ゴールを決めた時って、最高にスカッとするんだぜ。その瞬間のことを忘れられなかったんだ。どんなに辛い時間が長く続いたって、それをぜんぶチャラにする一瞬ってのはきっとある。佐城にもそういうの、ないか?」

 どこか遠くを見るような目を、佐城はした。

 ぼうっと考え事をしてたかと思うと、足元の白猫を見下ろして、肩を小刻みに震わせて。

 そのきれいな目から、いきなり、ぽろって……涙がこぼれた。

 おいおい、嘘だろ?

 なんだよ、地雷踏んだのか?

 ちくしょう、野次馬がこっち見てやがる。

 違ぇよ、違わなくねぇけど、違うんだ!


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