14:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/05(月) 13:12:46.15 ID:XEdR9lYn0
夜、居間に入ると式が一人でお茶を飲んでいた。
「あれ、未那は?」
「出かけた。今日はクラミツのとこに行くって言っただろ」
「瓶倉君? ああ、そうだっけ」
そう言いながら、ちゃぶ台を挟んで僕は式の向かいに腰を下ろした。
「観布の母の件だっけ? その名前、久々に聞いたよね」
「ああ、久しぶりだな」
10年以上前、この街に未来を予知する占い師がいるという噂があった。
とある事件がきっかけで、僕と式はこの「観布の母」という人物を捜すようにと橙子さんから命ぜられたのだが
――――式は会えたらしいけど、残念ながら僕は出会えなかった。
最近、その人物が再びこの街に現れたという噂が立ち、今夜、瓶倉君がその調査に向かっているのだ。
「でもちょっとだけ興味があるな。未来視の占い師さんか」
「今じゃ歳をとってるから、あんまり視えてないらしいぜ」
「へえ、そうなんだ」
こういった超能力って、歳を追うごとに衰えていくものなんだろうか。
曖昧に頷きながら式が差し出してきた湯呑を受け取り、熱いお茶をすすっていると。
「おまえさ、気にならないわけ?」
「なにを?」
式はいま僕が飲んでいるお茶のように渋い顔をしている。
「未来視のばあさんのことより、未那がこんなに遅くに出かけていったってこと、気にならないのかってこと」
「そりゃあ気にはなるけど……式、さっきから言葉遣いが悪いぞ。
未那がいないからって、むかしの男言葉のクセは直さないと。あの子が真似したらどうするんだ」
「大丈夫。未那の前では絶対に使わないから」
すました顔でそう答えるけど、式は知らない。未那が式のいないところでこっそり母親の言葉を真似てるということを。
そしてそれを注意すると、未那は「お母さまの前では絶対に使わないから」と言う。どっちもどっちだと思う。
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