16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2014/05/05(月) 13:17:58.03 ID:XEdR9lYn0
「親離れ……そうか。未那ももうそんな年頃になったんだな」
物心つく頃からずっと僕の後を追って、パパ、パパと呼んでくれた小さな娘。
父親としては少しさびしい気はするが、これもまた成長の証だ。
「そうか、うん。我が子が外の世界に興味を持って他人と関わるっていうのはいいことだ」
心からそういう気持ちでしみじみと話しているというのに、式は僕の顔を見て呆れたといわんばかりのため息をつく。
「幹也、おまえって、ほんとにおめでたい奴だな」
「式こそ、さっきからなんなんだ? 言いたいことはちゃんと言えばいいじゃないか」
式はむっとしたように半目になった。
「あの子はもう10歳になったんだ」
「うんそうだね。それで?」
「おまえにとって未那はいつまでもかわいい子供で、この家でずっと親子3人で仲良く暮らしていくんだとか思ってるだろうけど、
そんなの、あと数年で終わるかもしれないって考えたこと、ある?」
「まさか式、未那がお嫁にいっちゃうとか心配してるわけ?」
その発想に呆れるというか、笑いが込み上げた。
「なんだかんだ言って、君の方がずっと心配性じゃないか。
未那はまだ10歳なんだぞ。今からお嫁に行く心配をしてるだなんて、気が早いにもほどがあるよ」
いつもは僕のことを親馬鹿だと言うくせに、式の方がよっぽど親離れできていないじゃないか。
君らしくもない、と言って、笑い飛ばしてやろうとしたその時。
「クラミツがどうこうじゃない。問題は未那なんだ。確かにあの子はまだまだ子供だけど――――」
式はなぜか深刻そうに眉をひそめた。
「うちはなんでかさ、代々早婚なんだ。母だって高校を卒業してすぐにここにお嫁に来たし……オレだって、そうだし」
「確かにそうだけど、だからといって未那も必ずってことはないんじゃないかな」
「甘いな幹也。オレなんか子供の頃から人嫌いで、結婚どころか誰も好きになれなかったんだぞ。
なのにおまえが現れて、あれよあれよで19には未那を生んでたんだ」
「…………」
なんというか……式が言うと妙に説得力がある。
「こんな性格のオレでもそうだったんだから、未那はもっと早いんじゃないかなって思うんだ。もしかするとほんと、あと2,3年――――」
「いくらなんでもそれはないぞ。12,3歳なら未那はまだ中学生じゃないか。
日本の法律上、女の子の結婚は16歳以上って決められてることだし」
「それ、16にならないと婚姻届が出せないってだけで、将来の約束をするのに年齢制限なんて必要ないだろ」
「そんな……」
有り得ない、と言いたいところだが、この世界に絶対なんて言葉はないということを僕は身を持って知っている。
式と出逢ってから、僕はその「有り得ない」事態に嫌というほど遭遇してきているのだ。
それにしても未那が結婚……? つい最近やっと小学校に上がったばかりだっていうのに……いや、でも、あの子は時々妙に大人びたところがあるし、こうと決めた時には式よりも頑固なところがあるし……そんなことよりも、問題は相手だ。瓶倉君なら完全に犯罪レベルだし、かといって学校のクラスメイトじゃまだ子供過ぎるし……結婚なんてもちろん大反対といいたいところだけど、10代で式と結婚した僕にはたしてそれを言う権利があるのかどうか……パパたちだって同じじゃないのと未那に突っ込まれたら、一体どう答えたら――――
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