過去ログ - トール「フィアンマ、か。……タイプの美人だ」
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11: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2014/05/09(金) 22:20:28.34 ID:OJBg946x0

「目が、覚めたのか」
「…俺、何日寝てた?」
「二日程だよ」

答えつつ、彼女が剥いているのは林檎だった。
左手は、繋いだ当時よりもずっとよく動く。
危なっかしい動き一つ見せずに、林檎を四等分にして。
プラスチック製のフォークを刺すと、フィアンマは彼の口元に運んだ。

「ん、」
「腕が折れているんだ、無理はしない方が良いだろう?」

言われるがまま、林檎を食べていく。
最後の一切れを口に入れたところで、ノックもなしにドアが開いた。

「…思っていたよりも平気そうだな」
「オティヌス。……『トール』は」
「ああ、ヤツなら元の世界に。私が手伝ったんだ、失敗はないだろう」
「……そうか」

疑わず、良かった、と彼女は笑みを浮かべた。
本来の彼女は、疑心暗鬼に囚われているような人間ではない。
素直で照れ屋な、ヤキモチ焼きの女の子でしかない。
だからこそ、オティヌスが一つだけ混ぜた嘘に気がつくことはなかった。
うっすらと真実を嗅ぎ分けたトールは、何も言わずに林檎を咀嚼する。

「見舞いだ。受け取れ」
「トールは今腕が折れている。俺様が受け取るよ」
「わかった」

はい、と彼女が手渡したのはお見舞い用のフルーツバスケット。
高級そうなフルーツがぎっしりと編みかごに入っている。
様子を見に来ただけなのか、彼女はそのまま病室を去っていった。


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