過去ログ - トール「フィアンマ、か。……タイプの美人だ」
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70: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2014/06/02(月) 22:31:09.47 ID:Av34Uu/40

目も眩むような夏。
ぼーっとしながら、二人は公園のベンチに腰掛けていた。
噴水が涼やかに、背後で水の音を奏でている。

「あっつ……」
「……ストールを巻くのをやめたらどうだ?」
「これは全部霊装ひと揃えして初めて意味があんだよ」

自分の快適さ優先で死ぬなんてのは洒落にならない。

肩を竦め、トールは空を見上げる。
眩しい程の快晴は、徐々に夕暮れへと変化していく。

「何もしないで一日終わっちまったな」
「帰ったらトレーニングでもするか?」
「悪くねえ案だ。流石に身体がまた鈍る」

そろそろホテルに戻ろう、とフィアンマが立ち上がる。
日光に当たり過ぎて、若干の疲れも感じた。

「そうだ、」

な、と返答しかけ。
立ち上がり、そのまま、トールは前のめりに倒れた。
慌てて彼の前に回った少女の腕の中に、抵抗なく少年の身体が倒れこむ。
その身体に一切の力はなく、制御する意識は感じられなかった。
ずん、と死体のような、無気力の重み。

「トー、ル?」

困惑しながら、呼びかける。
が、彼からの返事はなかった。
ただ、静かに呼吸を繰り返すだけ。
じっとりと頬を伝ったのは、痛みを堪える脂汗にしか思えなかった。

「っあ、」

弾かれたように、携帯電話を取り出す。
咄嗟に頭に浮かんだのは病院と、それから。


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