過去ログ - トール「フィアンマ、か。……タイプの美人だ」
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◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2014/06/03(火) 22:59:28.42 ID:3AjQrl1g0
「もし記憶喪失になったら、どうなると思う?」
「遠まわしな言い方、やめたんだな。わかりやすくて良い」
「………きっともう、俺様のことはすきにならないよ。……すきに、ならなくていい」
「どうだかな。好きなものは好きだろ?」
「食べ物じゃあるまいし」
「何も覚えてなくたって、お前を知らなくたって、知ることが出来なくたって、俺はお前のことを好きになるよ」
「ならないよ、」
「二万回人生を繰り返して、その全てでお前のことが好きだったのに?」
「馬鹿馬鹿しい。…俺様は、もうひとりでもだいじょうぶ、」
「なあ、泣くなよ。…俺、フィアンマの泣いた顔は好きじゃねえ」
嬉し泣きして、泣きながら笑った顔が好きなんだ。
その顔が一番可愛くて綺麗なんだ、とトールは呟いた。
「お前を忘れないと、俺は化け物になるんだろ。
『汚染』か、或いは脳へのダメージか何かか」
現実を言葉にして出力し。
事実を整理した上で、彼は入院服の袖でフィアンマの目元を拭った。
淡い水色が青くなるまで、何度でも、優しい手つきで。
「好きだ」
「俺様も、好きだったよ」
「愛してる、」
「俺様も、愛していたんだ」
「過去形にすんなよ」
「もうすぐ過去になる」
こんな気持ちになるくらいなら、出会わなければ良かった。
などとは、絶対に思わない。
出会ったことで失ったものもあったかもしれないが、得たものの方が多かった。
「忘れられたくない、」
「……」
「他人に戻りたくない、俺様のことを知らない人間を見る目で見られたくない」
何より、こんなにも喪うことを恐れる宝物が手に入った。
一人の人間として、女の子として、幸せに過ごすことが出来た。
「一欠片も思い出せなくてもさ、俺、お前に会うんじゃねえかな」
「どうして、そう思える?」
「一回目はともかく、二回目の再会の時。
あれはお前から声をかけてきたけど、偶然だっただろ」
「……、…」
「だから、今度は俺から声をかけに行く」
「覚えていないのに? 俺様とトールに、何の接点がある」
「『右方のフィアンマ』じゃない唯の女の子と俺じゃ、接点はないだろうな」
左手の薬指はまった指輪を、少年の指が撫でる。
小さなストロベリークォーツで彩られた、美しいダイヤモンドのリング。
「無いだろうけど、………偶然ってのは、そんなものだろ?」
恋愛映画の主人公だって、ぶつかっただけで恋をする。
きっかけなんてどこにでも落ちている。ただ、素通りしやすいだけで。
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