過去ログ - トール「フィアンマ、か。……タイプの美人だ」
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◆2/3UkhVg4u1D
[saga]
2014/06/03(火) 23:00:41.17 ID:3AjQrl1g0
「話は終わった」
「……70時間話し込んで、結果は変わらなかったようだね」
「痛い思いをするのも、記憶を消されるのも、俺様ではない」
「…手に抱えているそれは?」
「俺様がトールに贈ったもの、思い出の品、諸々だ。
もう会うつもりはない。……これだけ持ち出せば、俺様の名前の一文字すらわからんだろう」
オッレルスの横をすり抜け、後を任せて外へ出る。
もう、あの病室に自分の要素は欠片もない。
髪の毛一本すら無いように掃除してきた。
「………」
廃ビルの屋上で、黙々と物を燃やす。
数少ない写真の類も、贈り物も、全て。
燃やさなかったのは、指に嵌めている指輪位なものだ。
「………、」
廃ビルから降り、単身でイタリアへ向かった。
トールの身柄については、オッレルスに保護を頼んである。
そんなに心配しなくたって、彼は一人で生きていけるだろう。
幼い子供ではないのだから。自分とは違って、きちんと自立している。
「………あめ」
空を見上げる。
示し合わせたかのように、大雨が降る。
同時に雷鳴も轟いたが、何もかもが気にならなかった。
ぴちゃぴちゃと、雨水で服を、髪を、身体を濡らして、あてもなく歩く。
このまま、ローマ正教徒に捕まえられて殺されても構わなかった。
「…何やってんの、アンタ」
のろのろと振り返る。
そこには、一人の修道女が立っていた。
とはいえ、黄色い修道服に、ピアスだらけの顔はお世辞にも修道女らしいとは言えない。
フィアンマは、彼女の顔をよく知っていた。
記憶を消す前に、沢山、沢山慕っていた、姉のような存在だった。
「…ヴェント」
「風邪、引くでしょうに。傘とか持ってないワケ?」
一緒に入ろう、と手を引かれた。
今更傘で雨を防いだって、何にもなりはしないのに。
「ん、帰ろ」
「……俺様に、もう帰る場所はない。今しがた、潰してきたところだ」
「なら、私が作ってやる。……だから帰ろう。
アンタの『誤魔化し』は、もう無視するからね」
自分の手を握る手は相変わらず細くて、温かった。
まるでねだったクッキーを焼いてくれるかのように、彼女は居場所を作ってくれると言った。
何度も断りの言葉を口にして、しかし、足はヴェントと同じ方向へ歩みを進め。
「記憶の件、帰ったら問い詰めるから。そこんトコよろしく」
「………ん」
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