過去ログ - トール「フィアンマ、か。……タイプの美人だ」
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94: ◆2/3UkhVg4u1D[saga]
2014/06/04(水) 22:51:45.36 ID:mifjCt1j0

「………バカ」
「…………」

記憶を消した理由。
神の右席を離れてからの足取り。
自分がしてきたこと、トールとのこと。
トールに忘れられ、居場所を完全に失ったということ。

全てを洗いざらい話した結果、ヴェントからの返答は単純な罵倒だった。
流石に、罵倒された位で泣くような心は持ち合わせていない。
気まずさに目を伏せ、ココアを啜る。
自分好みの甘さの茶色い液体に息を吹きかけ、カップをテーブルに置いた。
ヴェントに連れてこられたこじんまりとした教会は、ローマ正教の持つ建家だった。
祭礼などほとんど出来ないのでは、と思うようなこじんまりとした建物。
廃墟一歩手前の場所を譲り受けたのだ、と彼女は語っていた。
何でも、今は見習い神父の世話をしているらしい。
一度は離れたものの、ローマ正教の穏健派方向の様子を見て戻ったようだった。

「どうしてそうそう毎回、辛い方ばっかり……」

腕を伸ばされ、彼女も自分も座ったまま。
フィアンマは抱きしめられ、静かに項垂れる。
それが一番良いと思ったから、という理由しかない。

「俺様は、幸せだったから。その幸せを投げ打ってでも、救いたいものが出来たんだ」

後悔なんてしない。
割り切ることなんて、忘れることなんて、一生かかっても無理だろうけれど。
それでも、後悔して、後ろを振り返って、泣き喚いたりなんてしない。
自分を忘れた彼の隣で、尚、奇跡に賭けて生きていくという道を選ばなかったのは、他ならぬ自分だから。


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