13:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/09(金) 20:20:05.47 ID:OHJpcaUT0
003
その後、出版社を通して主演の件を了承すると僕は直接、月火ちゃんに貰った千石の電話番号に掛けた。
プライベート用の電話なのだろう、見知らぬ番号にも関わらず千石は電話に出てくれたのだった。
『もしもし、千石です……どちら様ですか……?』
その声には、確かに面影があった。
五年前、蛇に心を奪われて暴走した、あまりに純粋すぎた少女。
「……千石か」
『暦……さん……?』
「ああ、僕だ……阿良々木だよ」
『…………』
「突然で申し訳ない。実はな、千石の描いた漫画の主演をうちのアイドルがやることになってな……僕は今、アイドルのプロデューサーをやっているんだ」
簡潔に事実だけを述べる。
ここで昔の事を掘り返しても仕方あるまい。
そもそも、僕はもうあの時のことに関して微塵も千石を責めるつもりはない。
「出来たら、挨拶も兼ねて会いに行きたいんだけれど」
『……わかりました……』
千石は何を聞くでもなく、待ち合わせ場所だけを僕に告げて失礼します、と通話を絶った。
何処か覇気がなかったのは気のせいではないだろう。
当たり前だ、かつての辛い過去の原因となった男が、五年越しに会いにくると言うのだから。
さて、千石と会うことが心苦しい――なんてことはないが、何も思わないと言えば嘘になる。
元々、五年以上も引きずったんだ。
いい加減過去にけりを着けるくらいのことはしなくてはなるまい。
折角こうして機会も出来たんだ。
「行こうか、萩原」
「はいっ!」
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