過去ログ - 阿良々木暦「ゆきほエンジェル」
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27:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/09(金) 20:55:32.76 ID:OHJpcaUT0

「……萩原、なぜお前はアイドルを目指したんだ」

「それ、は……」

萩原の背後で、羽根が蠢くのが視界に入った。
それはじわじわとその長さを伸ばしている。

まずい、『成長』している――!

「萩原!!」

「お人形なんて嫌だ! 可愛いだけなんて嫌だ! 私は……私は自分の力で成し遂げたかったんです!」

父親を慕う者が集う家庭に産まれ、余すことなく持て囃されて育てられた少女は、年齢を重ねるに連れ往々にして無言の悪意に晒されて来たことだろう。

有力者の娘だから。
可愛いだけだから。
そんなの、ずるいじゃないか。
お前の力で築き上げたものなんて何一つないじゃないか、と。

「みんながみんな、私を私として見てくれなかった!
 アイドルだからって、親方の娘だからって、可愛いだけだって、誰一人として私を見てくれなかった!」

そして彼女は『可愛いだけ』では思い通りにならない道を選んだ。
アイドルは飛び抜けた容姿をもってしても、それこそ世界一の美女美少女であろうと成功する保証のない世界だ。
こんなことをプロデューサーの僕が言うのもおかしな話だが、ギャンブルに近い。
知識や人脈である程度の融通は効いても、最終的には大小はあれど運が絡んでしまう。
アイドルとは言え水物である以上、それは避けられない。

けれど、万人の夢だ。
いくら現実が汚い、穢れていると嘆いたところでそれは変わらない。
そんな、重いものなど何も持つ必要もない環境で育った身でありながら。

「ふざけないでくださいよ! 私を何だと思ってるんですか!」

それでもアイドルの道を選んだお前だからこそ――誰よりも輝けるんだ。

「私は――――萩原雪歩です!!」

「よく言った……萩原」

「え……あ……!?」

我に返ったのか、萩原が目をぱちくりとさせて辺りを見回す。
その後、自分のやらかした行動を思い出したのか、今までで見たことないほどに顔を紅潮させる。
それはまるで蛸か何かのようだった。



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