113: ◆tcMEv3/XvI[saga]
2014/06/23(月) 08:54:13.15 ID:sxdr4vspo
#4−14#
動揺。
血が止まらない。
少年は右手で胸を抑え、よろよろと、何かを求めるように動き出した。
そして倒れ、膝をついて神父を見上げる形となった。
神父「無能力のクソガキがァ……私の右腕を奪ったのはお前たち『聖堂』なんだよ! あげく私の能力まで奪ってくれて……」
少年「くっ、うっ…………貴方、2つ誤解しています。1つ目、貴方の右腕は『旧米軍』のミスにより失われたのです。2つ目は……」
少年の眼光は、普段と変わらない。希望と明るさに満ちた瞳だった。
だが神父は興奮した様子で、少年の弁明もお構いなしに、死にゆくであろう相手を罵り続ける。
神父「うるせぇッ……これから死ぬってのに、そんなウゼェ目で見てくるんじゃねェーぞォ!!」
神父「俺はなぁ! お前が悔しがる顔を最初に見たくて、それが今まさに成就されようとしてンだよ!! 絶望の眼差しで俺を見ろよ!!」
少年「あぁ……僕の好きだった『神父先生』はもう居ないんですね……」
少年の呟きに呼応するかのように、突如として、右手で触れていた少年の胸の銃創が発火する。
そう――発火だ。それとしか形容できない。
火が異常な速さで少年を包み込もうとする。
顔が火で包まれる直前、少年は叫ぶように言った。
少年「2つ目の誤解はッ! 僕を『無能力者』と油断していることだ!」
《ファイアスターター》……僕自身を焼き尽くせッ!!
少年は嘘が苦手だった。
だから少年は、勝利の見込みが出るまでザナドゥ能力を見せない。
神父「フンッ! 私のザナドゥ能力を忘れたのか? 『半径10cmを真空』にッ! そして『即時解除』!!」
轟音、強風。
神父を中心として局地的な爆風が生じる。
少年が前方に吸い込まれ、神父が右方向に吹き飛ぶ。
神父は右の義手を失っていた。つまり、表面積は左手側の方が多く――『自身の半径10cm』という定義をいびつにしていた。
当然、表面積の多い左手側の方がより多くの風を生む。
神父は吹き飛んだ右方向で、隠し持っていたナイフを、少年の頭めがけて振り切った。
だがナイフは、少年をすり抜けた。
少年は作戦変更とばかりに逆方向を走り、唯一の出入り口であるドアを溶接して退路を塞いだ。
そして神父の方を向き直り、炎を帯びる状態を解除して言った。
少年「燃えている間は炎と同じ性質を得て、物理的なダメージが無効です。まだ続けますか?」
これまでの「翻弄される少年」とは別人だった。
荒々しい獣性と騎士のごとく高潔さが同居したような、奇妙な雰囲気を纏っていた。
神父は圧倒され、何もできなくなってしまった。
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