39: ◆tcMEv3/XvI[saga]
2014/05/27(火) 05:48:35.88 ID:vmBYOszLo
  
  
 #2−2# 
  
  
 道路の途中で4mほど隆起していて通り抜けできない場所があった。 
 なので脇の住宅のベランダを伝って進む。 
 男が記憶喪失でなければ、少年期の冒険心を思い出してワクワクしたかもしれない。 
  
  
 男「で、この世界について聞きたいんだけど。なんで廃墟なんだ? 何があったらここまで荒廃できる?」 
  
 少女「……それも知らないのねぇ。記憶喪失っていうのは、どうやらマジみたいね」 
  
  
 「『文明崩壊』って知ってる? 
  西暦1999年7月、地球上の全てのプレートがグチャグチャに動きまくって、沢山死んで、人類の文明は終わったの。 
  約50年の時を経てもなお、未だに復興は成り立っていない。今は西暦2056年よ」 
  
 「50年? さすがにそれだけあれば復興できそうだけど」 
  
 「そのプレート移動の直後からずっと……地球全てを覆う形で、強力な妨害電波と、電子機器を無力化する電磁パルスが発生してる。 
  コンピュータ、無線機、製薬、冶金、気象観測などなど――――中途半端には出来るけど、それ以上の発展は望めない。 
  分かるでしょ? 復興には電波と電子機器が必要なのに、複雑な機械は、全て、確実に壊れる。 
  もう人類は、文明を発達させちゃいけない場所まで追い込まれてんの」 
  
  
 少女「……死因の1位が『伝染病』で、その次が『人間同士の殺し合い』、3位が『肉食動物に襲われる』って感じ」 
  
 男「なるほどね……そんな終末的な世界じゃ、僕たちみたいな超能力者も幅を利かすことができそうだ」 
  
 少女「ええ。今、私の住んでる集落を目指してるんだけど……そこじゃ私は『プリンセス』って呼ばれてる」 
  
 男「姫……? お転婆小娘にしか見えんぞ」 
  
 少女「でもね、能力と口調と態度だけで、こんな危険な世界を処女のまま生きていける。身寄りがなくても慰み者にならない」 
  
 男「その集落じゃ、弱いヤツは労働力でも性的分野でも搾取を受けるってことか?」 
  
 少女「そうよ。……タビーっていう友達がいたんだけど、彼女は日常的にレイプされてて、10歳で妊娠、それを苦に自殺した」 
  
 男「…………大変な世界なんだな」 
  
 少女「川を渡るわよ。日が暮れる前に集落に戻りたい」 
  
  
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