58:名前表記について>>55 ◆tcMEv3/XvI[saga]
2014/05/29(木) 17:01:47.77 ID:+8fOvrngo
#3−1#
あと1時間ほどで「聖堂」に到着する距離だ。
空が僅かに赤みを帯びてきた頃合い、ダニエルと少女は、先行して偵察する軍曹を追う形で廃墟の町を歩いていた。
あちこちにコケが生えた廃墟町を、鳥の清らかなさえずりが往来する。
ダニエル「軍曹を先行させて良かったのか?」
少女「というと?」
ダニエル「会ったばっかりだろ。信頼できるのか?」
少女「アンタは私のこと信頼できるの? 胡散臭いところ、沢山見せちゃったけど」
ダニエル「……あぁ、そういえば全員、今日知り合ったんだったな……」
少女「そういうこと……。えっ。ちょ、ちょっと……すごいスピードで人が近づいてる!!」
ダニエル「敵か!?」
奥から数度に渡って衝撃音が響き、いくつかの建物が倒壊する音に続いた。
彼らは、まるで工事現場のような騒がしさの中に置かれた。
少女「軍曹がやられた!」
そう言うが早いか、5mほどの高さをもつ屋根から人が飛び降りてきた。
緑色のチャイナ服を着た、妖艶なアジア系の女性だ。
胸下まで伸びる髪は濡羽色。
切れ長の目の中に、こちらをじっと捉える黒い瞳。
艶やかな唇は、妖しく微笑んでいる。
ダニエルは彼女に瞳を奪われてしまった。
だがそれよりも気になることがあり、その違和感が彼を現実へと引き戻したのだ。
彼女は、不思議なことに、一切の着地姿勢をとらずに高さ5mの屋根から降りたのだ。
しかも、一切の音を立てずに……。
少女「ダニエル君……私の隣で一目ぼれとはいい度胸ね」
ダニエル「いや、違うんだ……おい、お前、只者じゃないな!」
シェンメイ「『お前』じゃない。――シェンメイだ。僕を呼ぶなら、そう呼んでくれ」
空間が澄み渡るような声。
隙が一切ない、洗練された動作。
シェンメイは一切の威圧感を発していない。
だが――――ダニエルは、彼女に勝利するヴィジョンを一切思い浮かべることができなかった。
少女「して……ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」
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