過去ログ - 阿良々木暦「ふみかワーム」
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19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/29(木) 19:57:36.81 ID:jPxrNCQ30


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「ここです」

鷺沢に案内されて辿り着いた先は、如何にも雰囲気のある古い倉庫であった。
造りとしては一昔前の物置、といった表現が正しいだろうか。
鷺沢が鍵を差し込み建て付けの悪い、それでいてらしい音を出しながら開く扉を潜ると、その光景に思わず息を飲んだ。

コンビニ程度の広さの倉庫に、此処狭しと本が並べられ、積み上げられている。
何でも売り物以外でも彼女の叔父であるところの店主のコレクションや店に入らない分がここに保管されているらしい。

「これは……凄いな」

「叔父は蒐集家ですが、保管には割と適当でして……」

それで鷺沢が時折個人的に整理をしに来ているらしい。

「うわあ……雰囲気あるっスねえ」

荒木が身近な古びた本を手に取りぱらぱらとめくるが、英文だらけの内容に諦めて本棚に戻す。
見たところ、印刷物だけでなく直接墨で書かれたような年代物もあるようだ。

「それで、僕たちは何を手伝えばあいんだ?」

「そうですね、まずは日干しする本を分けてジャンル毎に仕分けを――」

懇切丁寧に説明していく鷺沢の声も片隅に、僕は早くもこの場所を気に入っていた。
時代から丸ごと置き去りにされたようなこの空間は、何処か落ち着く。

その感情の出処は郷愁か感傷か、それとも僕自身が時代と共に忘れ去られて行く吸血鬼の一部だからか。



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