過去ログ - 阿良々木暦「ふみかワーム」
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20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/05/29(木) 19:59:18.49 ID:jPxrNCQ30

「ひっ……!」

と、鷺沢の短い悲鳴と、本を取り落とす音がほぼ同時に聞こえた。

何事かと振り返ると、地面に落としたことで開いた本が視界に入る。

「な……っ!?」

『文字が蠢いていた』。

ぐずぐずと崩れ出した文字はまるで虫のように紙の上を這いずり回り、本の中から出ようとしているように見える。

「な、ななななんスかこれ!」

荒木も取り乱している。
当たり前だ、文字が動き出すなんて事は――怪異以外に考えようがない。

「う、背紙魚……!?」

「え……? きゃあ!?」

びゅるん、と蛇か何かのように形を得た文字の塊が、余所見をしていた荒木に次々と巻き付く。
文庫本一冊分の文字数は平均して約十万文字程度と何処かで聞いたことがある。
一文字は蚊ほどの大きさの活字も、数が集まると人一人を覆うくらいになるのか。

「忍!」

感心している場合ではない。
すぐに影に手を突っ込み、心渡を取り出すと耳なし方一のように全身を文字で覆った荒木に斬りつける。

「な……」

「あ……っ、く……!」

荒木ごと怪異を斬り捨てた筈が、一瞬荒木の周囲からばらけただけで、再び元の状態に戻る。
足元を見ると、斬られたのであろう文字の残骸が、血のようにどろりとしたインクとなって地面に染み込んで行くだけだった。

「数が多過ぎるのか……!」

荒木を取り巻く文字の数は、約十万。
それら全てを斬るには何合必要なのか、そんなもの想像もしたくない。

ならば――。



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