過去ログ - キョン「ペルソナァッ!!」
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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/13(金) 23:03:41.97 ID:2DGnVtPno
時は、十月の終わり。

秋の心地よい空気が、学校中から溢れ出し、街全体、広くはこの国全域を包み込んでいた。
開け放たれた窓の向こうから、部活動に勤しむ生徒たちや、野生を生きる鳥や虫
そんな無数の生命の営みが、ざわめきやせせらぎとなって、室内に流れ込んでくる。

その窓の辺に、分厚いハードカバーを抱え、刻まれた文面を几帳面そうに目で追っている、寡黙な少女が一人。
更に、部屋の中央あたりに位置する会議用の長机に向かい
こちらはいくらかカジュアルな体裁の文庫本のページを、気だるそうに目で攫っている、少女がもう一人。
その少女の向かいでは、日頃から笑顔を怠らない、俺に言わせてもらえば芯のない表情を年中浮かべている男が
机の上に広げられた碁盤を前に、珍しく難しい顔をしながら唸っている。
窓からもっとも遠い位置に置かれた小さなテーブルのそばには、こちらもまた難しい顔をしながら
手の中で、香り高い茶葉を混合する作業に没頭している少女が一人。

そして、主のいない団長席に腰をかけ、特に熱中するわけでもなく、ディスプレイに表示されたJ-POPのPVを眺めている、俺。

とある日の放課後。ご存知、SOS団の部室には、五つの色とりどりの沈黙が転がっていた。
五人それぞれが、お互いの行動に干渉することなく、ただ本能のおもむくままに、各々の興味の先に意識を集中させている。
平和。そんな言葉がもっともふさわしい、気だるく、温かな時間の中に、俺たち五人は居た。

「ね、なに観てるの?」

不意に。五人それぞれ別々の方角を示していた羅針盤のうちの一つが、何とはなしに俺とぶつかる。
先程まで文庫本のページを捲っていた少女……SOS団、団員その五、朝倉涼子が、手元の媒体に飽きたのか、興味の先を俺へとぶつけてきたのだ。

「PV。プロモーションビデオだよ」

耳に突っ込んだイヤホンの片方を外しながら、俺はなんとなく投げかけられた質問に対して、なんとなく返事をした。
俺の視線の向いていたディスプレイには、今年の頭、休止していた芸能活動に復帰したばかりの、若い、俺と同い年ほどのアイドルが、歌って踊る姿が映し出されている。


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