18: ◆dINyckyVoNyT
2014/06/22(日) 04:47:29.56 ID:oLOpIgXJ0
「だからさぁ!分かってやってんの?コレ!!」
少し頭を整理したところで口元を軽く拭った所で、ようやく声が出た。
「怒ってる?」
「怒ってるよ!見れば分かるだろ?」
口調は荒くなってるし、怒りで血が頭に昇って顔は真っ赤なはずだ。これが怒っていないと言わずして、何と言おうか。
「嘘」
先ほどより近くない位置に、義姉が顔を寄せてきた。
心臓は動いている、というのが正しいのだろうが、その瞬間心臓がドクンと本当に跳ね上がるような気がした。
俺の中を全部覗くように、見つめる二つの目。
「本当は喜んでる……そうでしょ?」
「前にも言っただろ……俺は弟だし、姉ちゃんは姉ちゃんだ」
「今そういう話じゃないよ?怒ってるか喜んでるか、だし」
「そういう話だよ。俺たち姉弟じゃん」
「だから何?」
ようやく俺から顔を離すと、さっきと同じ距離でいつもの優しい笑顔ではなく、真剣な顔つきしている。
「そういうのって、良くないと思うし……」
「やっぱり違うよ、話。姉弟かどうかじゃなく、男はどう思ったの?」
言えない。本当は飛び上がるほど嬉しい、だなんて事は。
確かに俺だって一人の人間で、好意を抱いている相手とキスしたり、手を繋いだり、そういう親密な関係になる事に関して嫌なわけじゃあない。
でも実際にその行為をしてみて感じた事は、誰に対してなのかよく分からない罪悪感と、背徳感。
とてもただただ嬉しいとは言えなかった。
「…………」
「言ったよね。恋愛とかよく分からないんだって」
少し前に一緒に帰った時に、そんな事を聞いた覚えがある。あれは、初めて手を繋いで帰った日。
「よく分からないけど、男といるとドキドキする」
「よく分からないから確かとは言えないけど、きっとこれが今、私にとっての恋なんだと思うんだ」
義姉の言葉が俺の脳みそに深く突き刺さる。
義姉が、俺に恋をしている。
それは俺が心のどこかで願っていた事で、あるわけないと否定していた事。
いつも頭の中でうやむやになっていた形が、義姉の言葉によって明確に形作られていく。
「俺、今のままで十分幸せだよ」
全部が時を止めて、まったく動けないような感覚がする俺がようやく絞り出した言葉がそれだった。
壊したくない。
今の関係を、この距離感を。
俺が本当に恋をした相手からの好意は、たくさんの針を固まりにしたように刺々しく、飛び込む勇気が湧かなかった。
何より串刺しにされた後、その針が抜けてしまう事を恐れて口に出たのがこの言葉だった。
「何も変わらないよ。こういうのはいつまでも続くものなんだからさ」
「今のままと何も変わらない。私と男は姉弟のままで、それが近いか遠いかってだけのことなのに……」
一粒、義姉の目から涙がこぼれる。
何に対してなのか……何故目に涙を溜めて、それが流れ出てしまったのか……自分自身ではない人の考え方の違いに困惑したまま俺は何も言えなかった。
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