6: ◆dINyckyVoNyT[sage ]
2014/06/19(木) 03:10:42.38 ID:pYLU/na50
俺の同級生は、自分が何をしてもいいもんだと勘違いばかりしてる。
それが普通なんだとしたら、俺は普通が恐ろしくてたまらない。
普通ってなんだろう、と毎日のように感じているが、特に悪さもしないで静かに一人の人間として、誰かの人生の背景になっているのが俺の中の普通だと感じている。
自分の人生を、確かに自分の意識がある状態で歩んでいて、アレをしようとか、コレをしようとか考えていても、他人からしたら一人のどこにでもいる人間として捉えられている。
俺の周りの人は皆、そんな存在になるのが嫌で必死に自分を主人公に見立てて色んな事に手を出しているように見える。
ちょっと捻くれた、斜めから意見を言いたがる、俺は他の人間とは違うんだ!という典型的パターンで生きてるな……なんて考えながら、大きな変化がいらない俺はそこそこの日常に満足しながら生活している。
今日も歩いて、明日も歩いて、そんな毎日を過ごすが、どこか遠い所で俺の知り得ない大きな事がポツポツと起きている世界。
なんだか不思議な気分になりながら、赤く染まった道と、差し込む赤い日に目を細めながら今日も帰途につく。
「おかえり、男」
「ん、ただいま、姉ちゃん」
「その呼び方も随分と様になってきたね」
「そりゃあ、毎日そう呼んでるんだから普通でしょ」
「今日も二人、遅くなるんだって」
「飽きないねー」
「飽きないでしょ、お互い愛しあってるんだから」
「お互いずっと愛し合えてたら、俺たち今頃姉弟してないよ」
「ん?ああ、それもそっか。でも、いつまでも続くと思っちゃうんだよね」
「急な終わりなんて誰も想像しないから急な終わり、なんだろ」
二人して、のんびり道を歩く。今日も相変わらずのたわいもない会話だ。
ぐん、と伸び切った影が歩いている道に沿って、今の俺と義姉の距離よりもずっと近い状態でゆらゆらと揺れている…… あれ?
ふと、頬に柔らかい感触。
「だったらこれも、急な終わりに入るかな」
自分の身に起こった事を頭の中で整理すると、今まで落ち着いて仕事をしていた心臓が、余計なぐらいに働き出した。
「姉ちゃっ、何すんだよ!」
そう言ってゴシゴシと頬を袖で拭うが、先ほど触れた柔らかい感触が未だにそこにあるように感じる。
「へへー」
「へへーじゃねえよ。もう」
「姉弟として、終わった?」
「……いや、まだ姉弟だろ」
「うん、その通りだ。こういうのはいつまでも続くものなんだよ」
夕日に照らされた義姉の表情は、とても幻想的だった。俺の視界いっぱいが、そこにいる一人の人間だけでどんな絵画よりも価値のある一枚になっているように感じた。
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