9: ◆dINyckyVoNyT
2014/06/19(木) 04:24:27.44 ID:pYLU/na50
「私、男の人って家事とか全然できないイメージだった」
「なんだよ、それ」
「私のお母さんが……あ、男のお母さんじゃなくてね。いなくなっちゃった時、お父さんが私の面倒を見ることになったんだけど、実際はどっちが面倒見てるか分からなかったんだ」
今まで一緒に過ごしてきた中でお互いの過去に触れた事なんてなかったから、義姉が自分の母親について触れた話をしだして、少し困惑した。
「でも働いて養ってたのは義父さんなんでしょ?」
「まぁ、そうなんだけど……家事とか全然できなくて、私が頑張らなきゃまともに生活なんてできなかったよ」
「ふーん」
「でもね、男と会って、ちょっとイメージ変わっちゃった」
さっきまでご飯の方を見ながら話してたのに、少し照れたようにはにかみながら俺の事を見つめてきて、思わず箸が止まる。
「俺、何でもできるしね」
少し、背伸びをしたような言葉が出る。
母の姿を見て過ごしてきたから、仕事も家事も子育ても、実際に全部ひっくるめてこなす事なんて大人であっても難しいのに、少しいい所を見せたくて…ついそんな言葉が出た。
「ふふ、そうだね。何でもできちゃうから、イメージが変わったんだ……こういう人もいるんだって」
多分、他の人に言われても特に気にしないような言葉だったが、他でもない義姉の言葉であったため、一人の人間として、認められた気がして嬉しくなる。
「俺はまだ高校生だし、大人の仕事なんてしたことないから。ただ手伝ってるうちにできるようになっただけだよ」
「そっか、男も私とほとんど同じだもんね」
ほんの小さな共通点。
片親で、自分の事は自分でするのは当たり前。仕事で疲れた親を迎える一人の家族としてのあり方。
俺も義姉も、そうやって生活していた。
少し考えれば分かったことのはずなのに、この話題のおかげで初めて共通点として認識できた。
そんな小さな共通点をみつけただけなのに、義姉の事が今までよりも理解できるように感じられた。
「嬉しいなぁ、男と同じだ」
「……飯、冷めるよ」
俺が頭の中で考えていた、義姉と同じで嬉しいという感情を目の前で口に出されたため、なんとも言えない感情がこみ上げる。
素直にポン、と気持ちを出せる義姉が羨ましい。
俺だって素直に言葉にできれば、義姉に対する小さな恋心もぶつけられただろうに。
そういった面でも義姉は一枚上手で、また一つ義姉の魅力として俺の頭のなかに書き込まれてしまった。
俺ばっかり、どうしてこんなにドキドキしなくちゃならないんだ。
「俺も、姉ちゃんと同じで嬉しいよ」
義姉と同じように口に出したまではいいが、どこかに潜り込んで叫びたくなるような恥ずかしさで赤くなった顔を隠すようにしながらご飯をかき込んだ。
「や、やだなー……改めて言われるとちょっと恥ずかしいじゃん」
後悔はした。
後悔はしたけど、ようやく義姉に対抗して、少し意識させる事ができたことに心の中で小さくガッツポーズをするガキ丸出しの俺がいた。
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