過去ログ - 阿良々木暦「きらりホッパー」
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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/06/20(金) 19:05:45.46 ID:aUpPVcxlO


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「砌螽斯。みぎりぎす、と読む。キリギリスの怪異だ。蟻とキリギリスは知っているだろう?」

蟻とキリギリス。
日本ではかなりメジャーな物語のひとつだ。
働き者の蟻と怠け者のキリギリス。
夏にせっせと働き貯蓄をした蟻は無事冬を越すことができ、何もせず遊んでいたキリギリスは冬になり餓えと寒さに耐え切れず死んでしまう。
労働の大切さを説き刹那的な生き方を良しとしない、日本人らしい童話と言えよう。

「砌螽斯は言ってしまえば常夏の蟻とキリギリスだ。砌とは軒下を指す。自分の身長の数百倍も跳躍すると言われているキリギリスだが、砌螽斯は軒下に住み跳ばずに浮くキリギリスと言われている。砌螽斯に取り憑かれた者は、文字通り常時熱に浮かされたようにテンションが上がる。それは次第に本当に宙へ浮くようになり、羽化と浮く、が掛かっていて、完全に取り憑かれる、すなわち羽化すると、それこそ本当に何処までも浮き続け、空に呑まれ人ではない存在にまで昇華されてしまう」

最近、諸星が妙に調子がいいと言っていたのはそのせいだろう。

「人ではない存在に、ですか……」

「うー…………」

あの後、急いで会計を済ませタクシーで飛ぶように近くのカラオケボックスまで移動した。
何故カラオケなのかと言うと、まず人気がないことと、天井のある場所でないと諸星が浮いて空へ呑み込まれてしまうからである。
一度浮き始めると早いと聞く。
その証拠に先程までは5cm程度だった高さも、十分ほどで数10cmにまで浮いている。
元々の諸星の身長もあいまって、今にも天井に頭が付きそうだ。

「諸星……いきなりこんなことになってしまったけれど……僕を信じて、任せてくれるか」

「う、うん……」

流石の諸星も恐怖を感じているのか、中空に浮きながら不安を隠し切れない様子でスカートを押さえていた。
ひょっとしたらこの事態より僕にスカートを覗かれる事を危惧しているんじゃあないだろうな。

「阿良々木さんは、諸星さんを助ける術をご存知なんですか?」



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