11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/20(金) 23:11:49.22 ID:e5IvpnBoo
P「でも怪談っぽくないからダメだな。もっと怖いのにしよう。
話を一つ。山のペンションでの話。
ある山に友人達と旅行しにいった男性がいた。予約した宿は山の中にあるペンション型の宿泊施設で
水道ガス電気は通ってるが、食事などは自炊するというものだった。しかしいざ受付に行ってみると
どうやら予約のミスでダブルブッキングしていることがわかった。代わりの宿を用意すると言うものの
ここから距離がある場所で、山から離れた市街地寄りの場所だった。自然を楽しみに来たのにこれでは
意味ないと受付にいい、空いている部屋はないのかと尋ねた。すると受付は
「あることはあるのだが……」
ととても歯切れの悪いことを言う。男性達が問い詰めると受付はぽつぽつと話し始めた。
ほとんどのペンションは湖に面した広場に建っているのだがそのペンションだけが少し離れた林に一軒だ
け建っている。それだけなら今のようなシーズンであれば、お客を入れるのだがどうやらそれだけではな
いようだ。
「もしかして出るんですか」
友人の一人が尋ねると、受付は頭をかきながら頷いた。
そもそも林には元から廃屋があり、湖のペンションを作る際に雰囲気が損なわれるしどうせだから建て直
そうということで今のペンションになったらしい。しかしいざ客を泊めたら夜中に化け物が出たとクレームが
ついた。実際に受付もそのペンションに宿泊し、目撃している。取り壊そうともしたのだがいざ工事をしよう
とすると何かしらの事故に見舞われるために今現在も放置された状態になっている。
男性達は話し合う。いや、既に答えは決まっているのだ。なにせ化け物が見れる。受付が無事だというこ
とはおそらく何かしらを守れば襲われることもないのだろう。だけどここはひとつ交渉をしたい。友人の
一人が受付に話しかける。
「そこでもいいのだがダブルブッキングはそちらの不手際なわけだし宿泊代は安くならないのか」
受付はそうですねと頷いて、半額にすると言った。これで交渉は成立した。
案内されたペンションは二階建ての立派な建物で、化け物が出るといった雰囲気は微塵もなかった。内装
も綺麗で管理が行き届いている。
「いいですか。これだけは守ってください。夜中十二時近くになったら必ず一階の全ての窓やドアの鍵
を閉めてください。一時間ほどでいなくなりますし、二階は平気のようです。ですが一階だけは必ず
鍵を閉めて、出来ればカーテンなんかも閉めて二階にいるのが安全です。それ以外の時間は問題あり
ません」
「もしも閉め忘れたらどうなるのですか?」
「……わかりません。忘れた人はいないので」
受付はそう言い残して、鍵を渡し去っていった。その後、男性達は夜中を楽しみにしながら過ごした。
そして夜中。言われた通り、全ての窓やドアの鍵を閉めた。カーテンも閉めてある。それまで何が起き
るのか予想しあっていたが、時間が近づくにつれ口数は減っていった。やがて十二時の鐘が鳴った。
最初に聞こえたのは足音だった。獣の足音というよりも普通に靴の履いた人間が歩いているような音だ。
もしかして心配した受付が来たのかと思うくらいの足取りだった。しかし足音は玄関を通り過ぎて、ペン
ションの周りを周回し始めた。ずっと変わらないテンポで。確かに人間や動物の行動としてはおかしい。
だがそれだけなのだ。声や臭いといった物もない。ただ足音だけが聞こえる。その足音だって騒いでれ
ば聞こえないかもしれないほどの音だ。
「なんか思ってたよりつまんないな。カーテン開けてみるか」
「よせよ。受付に言われただろ?」
「でも化け物の目撃情報があるってことは見ても平気ってことだろ?
だったら見てみようぜ」
そういうと止める間もなく、一人がカーテンを開けた。
外は相変わらず薄暗い林だ。足音が段々と迫ってくる。鍵が閉まってることは離れていても確認できる。
そしてついに足音が窓の前まで来た。
それは下だけ見ればなんて事はない普通の人間の足だった。靴を履いた男性と思しき足だ。だけど腰か
ら上には何人もの人間を溶かして固めたような肥大した肉塊があった。腕も頭も足も胴体もばらばらに
くっ付き合わせたようなそれが何個もある目でこっちを見て、足を止めた。明らかにバランスが悪いの
に普通に歩いて窓際まで寄ってくる。外に向かって生えている手で窓をノックし、口々に老若男女の声音
で喋り始めた。
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