19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2014/06/20(金) 23:16:12.30 ID:e5IvpnBoo
その日も夢の話を友人にして不思議だよねと話すといつもより神妙な顔で
「古い数字だけが書かれた切符か……」
と独り言のように呟く。少女には友人が何を言っているのかよくわからなかった。
「まもなく到着です」
どこからかそんなアナウンスが聞こえてきた。向かいの老人が立ち上がる。窓の外で流れる風景が段々とゆっくりに
なっていき、鬱蒼と茂っていた林はいつの間にか白く濃い霧に隠れて見えなくなっていた。
「それじゃあお嬢さん。良い旅を」
老人は頭を下げて、廊下を歩いていく。少女も慌てて頭を下げる。降りる人が少ないようで誰かが立ち上がるような音
がしない。席に座って窓から風景を眺めるがこう霧が濃いと何も楽しめない。
床が軋む足音が聞こえて、まだ降りる人がいるんだと廊下を見ると友人の姿があった。思わず友人の名前を呼ぶと
立ち止まって振り返る。
「降りちゃうの?」
「切符があるからね」
友人はバイバイと手を振ってそのまま車両から出て行く。気付けば汽車は停止していた。窓に頭をこするようにつけて
外を覗く。僅かにホームのような足場だけが見える。その先は霧で何も見えない。汽車から降りた人が吸い込まれるよう
に消えていく。そこの友人の姿があった。少女は窓を開けて呼びかけたかったがはめ殺しになっているため開けることが
出来ず、そうこうしている間に友人の姿は消えていた。
この事を友人に話したかったが、その日は友人は欠席で話すことが出来なかった。
再び加速し始めた汽車。窓から外を覗くとまた林と遊園地のような建物が見える。友人達はあそこに行ったのだろうか。
車掌に話を聞くため、少女は車両の先頭に行く事にした。どのぐらいの車両を移動しただろうか。少女はようやく今まで
見た事がない車両に到達した。ここに来るまでの車両に乗っていた乗客はみな眠っていた。中には見知った顔もあった。
それは少女の身の回りの人間だったり、あるいは世界のどこかにいる有名な人でもあった。乗客は日本人だけじゃなく
あらゆる人種を乗せていたのだ。
最後に辿り着いた部屋には椅子が一つと車掌がいるだけで周りは室内と思えないような暗闇が広がっていた。
何を聞くべきか。少し悩んだが、やはり一番大事だと思うことを聞く。
「この汽車はどこへ向かっているのですか」
車掌は微動だにせず、こう答えた。
「未来です」
翌日。登校した少女は友人が死んだことを知った。
そして汽車の夢も見ることがなくなった。
数年後。そのことをすっかり忘れていたある日。大人とも言うべき年齢になった少女は夢を見た。
汽車の夢だ。少し驚いた後、自分のポケットに手を突っ込むとかさりと何かに触れた。
取り出すと古い紙に『2000-』と書かれていた。
以上」
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