17: ◆V0KrAyBMBI[saga]
2014/06/30(月) 19:40:14.30 ID:O3eRG2Ma0
椅子に座って、僕が紅茶を淹れているのを見ている先輩の前に、紅茶の入ったティーカップを差し出す。
「どうぞ、先輩」
「ありがとう。……この分だと、学園祭の準備でもないのに泊まりになるかもしれないわね」
「雨さえ止めばすぐ帰れますよ。道路の排水が悪いとかの理由で冠水しているわけでもないんですし」
僕の気休めに対して先輩は、「止めば、ね」と呟いた。
本当に止んでくれないと困るわけだが。夕食とか。
まぁ、まだ四時を過ぎたばかりだ。今から肩を落とすのも早計だろう。
「先輩は雨、嫌いですか?」
「そうでもないわ。雨音とか聞いているのは好きだし、
こうやって帰れない状況とかも、割と楽しんでるつもりよ」
「意外ですね。先輩面倒くさがり屋で学校に来るのも嫌なんでしょうから、
早く家に帰って読書でもしたいとか言い出すのかと」
「私をなんだと思っているの」
僕が言うと、先輩はさぞ不服そうに口を尖らせる。
「……実際その通りではあるけれど、そんな言い方されるのは癪だわ」
先輩が認める通り、先輩は家ではひどく面倒くさがり屋だ。
よっぽど喉が渇いていればまた別だが、基本手が届くところに置いてある麦茶すら、自分で注ぐということをしない。
学校での美人で真面目な先輩とは異なり、家での先輩はとにかく怠惰なのだ。
僕がこうして先輩の傍に居るのも、これが主な理由だ。
そうでもなければ、僕のような平凡な人間が先輩に近づける道理が無い。
勘違いしないでほしいのは、これは先輩に無理矢理やらされているわけではないということと、
僕がしていることは先輩の「お世話」や「介護」ではないということ。
僕は進んで先輩の小間使い紛いの事をしているし、そもそも先輩は僕よりも家事が上手い。
面倒くさがりなだけで、炊事洗濯掃除全て完璧だし、お茶も僕が淹れるより先輩が淹れたほうが全然美味しいのである。
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