18: ◆V0KrAyBMBI[saga]
2014/06/30(月) 19:48:15.23 ID:O3eRG2Ma0
「大丈夫です先輩。先輩はやれば出来る人です」
「それって結局何も出来ない子を育てる常套句じゃないかしら」
どうでしょう、と僕は誤魔化す。
先輩は不機嫌そうな表情を崩さないが、単にいじけるとか拗ねると言った類の物だ、
怒っているわけではないので気にする必要は無い。
これで結構可愛い人なのだ、先輩は。
勿論怒らせないギリギリのラインを見極めるのも大切だ。
先輩は一つため息を吐いてから、それからやっと不機嫌そうな表情を崩す。
「―――君は雨は、嫌い?」
「そうですね。傘差しても足元は濡れるし、濡れれば冷たいし寒いし、濡れなくても寒いし、
どちらかと言えば嫌いです」
「酷評じゃない。それはどちらかとなんて言わないわ」
「いえ、好きな部分もありますよちゃんと」
「随分とってつけたようなセリフに聞こえるのだけれど」
先輩は呆れているが、僕が雨を嫌う理由は基本的にただ一つ。
「寒くなりさえしなければ好きですよ、雨」
これだけだ。
これさえ無ければ、きっと僕は雨を好きになれるだろう。
「……そう言えば、―――君は寒いのが苦手だったわね」
「人より少し、って程度なんですけどね」
「そう」
「寒くなったら、先輩の温もりで暖めてくれません?」
「い・や・よ」
……わざわざ区切って強調しなくても。僕はほんの少しだけ傷ついた。
おのれ雨め。ますます嫌いになれそうだ。
そんな落胆した表情を浮かべた僕とは対照的に、先輩はクスクスと笑い、僕はそこでやっとからかわれたのだと気付く。
(……まぁ、先輩の笑顔でイーブンかな)
先輩の笑顔は綺麗で可憐で、先輩の笑顔で大抵の事が許せそうな辺り、僕も単純な人間だなと思う。
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