27: ◆V0KrAyBMBI[saga]
2014/07/09(水) 23:28:54.74 ID:Q3eUf7rm0
「ぐずぐずしてると、置いていくわよ」
先輩の急かす声が玄関から聞こえてくる。
でも先輩が僕を置いて先に行くようなことは無くて、
慌てて玄関に向かっても、先輩は扉も開けずに僕を待っていてくれた。
思わず笑いを溢すと、先輩がじとっとした目で僕を見る。
「……何にやにやしてるの」
「いえ、なんだかんだ言って、待っててくれるんですね」
「当たり前じゃない。今日は一緒に帰れないもの」
「え、な、なんてそうなるんですか」
不満な様子を隠さずに言う先輩に焦る。
そこまで嫌だったんだろうか、と考えていると、すぐに答えを提示してくれた。
「私、今日はバイトよ。忘れたの?」
頭の中で先輩のスケジュールを確認する。
そう言えばそうだった、すっかり失念していた。
先輩は週三日でバイトをしている。
どこかの喫茶店らしいが、恥ずかしいからとの理由で、詳しい場所は教えてもらえなかった。
幸い店の名前は教えてくれたので、今度友人に調べてもらって先輩の仕事の様子を見に行くつもりだ。
そこには勿論下心しか無い。
一緒に帰れないのは非常に残念だが、その分は家で補充すればいいだけの話だ。
「分かりました。美味しい夕食を用意して待ってますね」
「楽しみにしているわ」
先輩と笑いあいながら玄関を出る。
先輩と並んで歩く通学路、先輩との距離はいつもより少しだけ近かった。
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