8:唯「すなっふふぃるむ!」[sage saga]
2014/06/26(木) 22:21:21.54 ID:ToFZjpJj0
紬の身体はふくらはぎの辺りまですっぽりとドラム缶の中に納められてしまった。
両の足首はダメ押しとばかりに、男によってしっかりと握られている。
どれだけ身体をくねらせようが、ドラム缶の中で動くことが出来ない。
だが、紬の意思は、というよりも生存本能は身体を必死に動かして無駄な努力をさせようとする。
そして、意外なほど短い時間、おそらく二、三分といったところか。
その程度で紬の身体はあっけなく動きを止めた。
ドラム缶から突き出た両足は動く気配を見せない。
男「A rýchlejšie, než som si myslel」
男は肩をすくめてこちらに語りかけると、後ろへ振り向いた。
そこにいるのは顔を血まみれにして倒れた和とそれを気遣う唯。
男は先ほど澪の命を奪ったアーミーナイフを取り出し、二人の前に立ちはだかった。
唯「あ、ああ……」ガタガタ
ついに自分の番か、と震え上がる唯。
和はいまだに目をギュッと閉じ、眉根を寄せて痛みをこらえている。
男がナイフを突き出して二人に迫った。
唯「いやあああああああ!!」
しかし、次に男が見せた行動は実に予想外のものだった。
和の両手両足の拘束を手にしているナイフで断ち切ったのだ。
そして、さらに驚くべきことに、そのナイフを和の前へ放り捨てた。
男は和を指差す。
男「ハラキリ」
和「な……!?」
日本語だ。発音はだいぶ怪しいが確かに日本語だった。
男は次に唯を指差し、またも片言の日本語で和に話しかけた。
男「タスケル」
和「わ、私が、切腹すれば…… 唯を助けてくれるというの……?」
男「ハラキリ。タスケル」
和はナイフを見つめ、荒い息を吐いている。
和「ほ、本当に…… 本当に唯は、助けてくれるのね……?」
男「ハラキリ。タスケル」
和はしばらく荒い息を吐いたまま動かなかったが、やがて覚悟を決めたかのように目の前の
ナイフを力強く掴んだ。
和「やるわ……!」
唯「やめて! 和ちゃん、やめてよ!」
突如、唯が声を上げた。
唯「私の事は構わないで! 和ちゃんが死んじゃうなんて嫌だよ!」
和「これしかないの…… これであんたは家に帰れるのよ……」
唯「でも! でもっ!」
しばらく二人のやり取りを無言で眺めていた男であったが、やがてバッグから小口径の
回転式拳銃を取り出すと、銃口を唯に向けた。
「いいかげんにしろ。早くやれ」とでも言いたいのか。
和「やめなさい! やるって言っているでしょう!!」
腹の底から叫んだ和は弾かれたように立ち上がった。
そして、男を睨みつけたままナイフを振り上げると、自身の左脇腹に勢いよく突き立てた。
和「うぐうぅ!!」
和は身体を折り曲げて二、三歩後ろへよろめいた。
ナイフの刃が10cmほど刺さったままの傷口からは少しずつだが鮮血が流れ始めている。
むしろ顔や首筋を流れる脂汗の方が多いくらいだ。
和「ぐ…… ぐぎ、ぎいいいいい……!」
部屋中に響き渡っているのは和の口から漏れ出す歯ぎしりとうめき声。
だが和の動きはそこで止まってしまった。
31Res/34.41 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。