33: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:50:31.53 ID:xpCfEu5V0
だが取り出した財布を開けるや否や、三人は揃って渋い顔をした。
本当に小銭しか、しかも86円しか入っていなかったのだ。
「シケてごわす」
34: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:51:11.21 ID:xpCfEu5V0
太郎は暫くの間、地面に伏てウンウンと唸っていた。
やがて痛む頬を擦りながら、ゆっくりと上体を持ち上げた。
散らかった書類や教科書を掻き集め、財布と一緒にカバンの中に仕舞い込む。
35: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:52:10.62 ID:xpCfEu5V0
もはや使えない。火を見るより明らかだった。
前輪はパンクし、フレームも大分曲がっている。
やむなく自転車を置いて行く事にした。今は兎に角、時間が無い。
36: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:53:28.29 ID:xpCfEu5V0
2キロ程走ると川に出た。
幅50メートル程の小さな川で、片側一車線の橋が一本だけ架かっている。
この橋を渡れば、太郎の家までもう少しだ。
37: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:54:00.90 ID:xpCfEu5V0
橋の前では、警官が誘導棒を振っていた。
小走りに近寄り、太郎は事の次第を確かめる。
「通れないんですか?」
38: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:55:17.85 ID:xpCfEu5V0
ここまで来て間に合わないのか?
太ももがパンパンになるほど自転車を走らせたではないか。
相撲部員に絡まれても猛然と立ち向かったではないか。
39: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:56:15.97 ID:xpCfEu5V0
嗚呼、帰りたくない。
このまま何処かへ行ってしまおうか。
2、3日姿をくらましてやろうか。
40: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:56:52.87 ID:xpCfEu5V0
太郎は交通整理している警官から離れ、ヘナヘナと土手に座り込んだ。
ぼうっとして空を仰ぐ。
白い雲が西から東へ、亀の歩みでたゆたっていた。
41: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:57:31.11 ID:xpCfEu5V0
続いて三角形の雲が視界に映る。スカートのようだ。
しばらくすると三角形の雲はだんだんと崩れ始め、ついには丸く姿を変えた。ショートヘアに見える。
そうだ、例の本で表紙を飾るグラビアアイドルだ。
42: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:58:34.10 ID:xpCfEu5V0
そうだ、友がいた。
出発前、友に全てを任せたではないか。
彼ならきっとやってくれる。
43: ◆KpPu4lHfcc[saga]
2014/06/28(土) 18:59:29.63 ID:xpCfEu5V0
健太のエロに賭ける情熱は、太郎のそれに引けを取らない。
二人はお互いにお互いを認め合う、唯一無二の盟友であった。
東にゴミ捨て場があれば行って猥本を探し出し、
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