過去ログ - キリト「抗え、最後まで」
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5:911612[saga]
2014/07/08(火) 00:46:48.45 ID:5FAp/yk20


横尾『より正確に言うならば、10分間の外部電源切断、2時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解もしくは破壊を試みた場合に限り、脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界では当局およびマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた例が少なからずあり、その結果、213名のプレイヤーがアインクラッド及び現実世界からも永久退場している』
 

どこかで、ひとつだけ細い悲鳴が上がった。

しかし、周囲のプレイヤーの大多数は信じられない、あるいは信じないというかのように、ぽかんと放心したり薄い笑いを浮かべたままだ。

俺もまた、脳では横尾の言葉を受け入れまいとした。

しかしそんな俺の意思とはお構いなしに、不意にがくがくと脚が震える。


クライン「信じねぇ……信じねぇぞオレは」
 

地面にへたり込んだクラインが、しゃがれた声を放つ。


クライン「ただの脅しだろ。できるわけねぇそんなこと。くだらねぇことぐだぐだ言ってねえで、とっとと出しやがれってんだ。いつまでもこんなイベントに付き合ってられるほどヒマじゃねえんだ。そうだよ……イベントだろ全部。オープニングの演出なんだろ。そうだろ?」

キリト「……俺だって、そう信じたいさ。けど……」


俺も頭の奥では、クラインとまったく同じことを喚き続けていた。

しかし、俺達を含む全プレイヤーの望みを薙ぎ払うかのように、あくまでも実務的な横尾のアナウンスは再開された。


横尾『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断|猶予《ゆうよ》時間のうちに病院その他の施設へと搬送され、厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ。諸君には、安心して……ゲーム攻略に励んでほしい』


キリト「な……」
 

そこでとうとう、俺の口から叫び声が迸った。


キリト「何を言ってるんだ! ゲームを攻略しろだと!? ログアウト不能の状況で、呑気に遊べってのか!? こんなの、もうゲームでも何でもないだろう!!」


上空に浮かぶ巨大な真紅のフーデッドローブを睨みつけ、俺はなおも吼えた。

が、俺の叫びを意に介することもなく、横尾太郎の抑揚の薄い声が、穏やかに告げる。






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