過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
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304:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/08/12(火) 22:40:51.29 ID:29CFa3JL0
 マサラタウンの草原はひたすらにのどかだった。天気は快晴、大型のポケモンがおらず、騒がしい動物の鳴き声もない。

 レッドはかつてこの場所が好きだった。静かで安全で、グリーンに負けた悔しさを冷めさせるにはもってこいの場所。

 今もこの場所が好きだ。理由は変わった。あの日、エリカと出会えた場所だから。

 レッドはフシギバナを出して、その頬に手を当てて語りかける。

「覚えてるかフシギバナ。ここで、初めてお前にポケモンフードあげたな。あの時は俺がしゃがんでたのに、今じゃ俺がお前を見上げてる」

 微笑みと共にフシギバナの頬を撫でると、フシギバナは気持ちよさそうに声を漏らした。

 レッドは再び腰のモンスターボールを放っていく。現れたのはピジョット、ラッタ、バタフリー、ガラガラ。

「ギャラドスはごめんな。ここに小川があったらよかったんだけど……。皆、遊んでおいで」

 レッドがそう言うと、ピジョットとラッタは嬉しそうな鳴き声を上げて久しぶりの故郷に飛び出していく。

 バタフリーはフシギバナの花の蜜が気になるのか、レッドとフシギバナの近くをゆっくり旋回していく。

 ガラガラは適当にホネこんぼうをいじったりブーメランにして遊んだあと、飽きてしまったのかフシギバナの体を背もたれにして座り込み、寝息をたててしまった。

 レッドはそれを見て静かに笑ったあと、ガラガラの隣に座り、同じようにフシギバナを背もたれにする。

 フシギバナの大きな葉っぱと花が日陰になって以外と涼しい。

 今までカントー地方を全力で駆けて来た。ここまでのんびりするのは何時ぶりだろうか。

(少し、寝てしまおうか)

 そう思った時にはレッドはもう瞼を閉じている。耳を澄ますと草が風で擦れる音、ガラガラとフシギバナの静かな呼吸。遠くでポッポ達の羽ばたきと鳴き声が聞こえる。

 夢を見た。淡い桃色と黄色が混ざった花畑の中、遠くに誰かの後ろ姿。ボブカットの黒髪に和服姿の女性。名前を呼びたい。

 花の香りがした。レッドはまどろみのまま目を開ける。目の前に和傘を差した桃色の袴姿、その女性の微笑む口元までが見える。着物に散りばめられた白い牡丹の意匠がはっきりとわかる距離。

 瞼を完全に開くと、一瞬の驚きと、ゆっくりと広がる喜び。

「こんなところで眠っていると、風邪を引いてしまいますよ?」

 どうしてこんなところに? とは聞かない。
 
「会いたかった、夢みたいだ」


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