過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
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383:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/08/31(日) 01:54:55.84 ID:iy+ifKHv0
 シバが去ると、今度は四天王用の選手入場口から黒い霧が立ち込めてくる。

 黒い霧はそのままバトルフィールドまで広がり、レッドの視界を奪う。静かな笑い声が聞こえてくると同時に霧は渦を巻いて拡散し、その中心に杖をついた老婆が現れた。

「ククク……。あたしは四天王のキクコ。あんたがオーキドのジジイが託した二人目のトレーナーかい。なんだか垢抜けないねえ」

「それはどうも。オーキド博士とお知り合いなんですか?」

「オーキド? はっ! 昔は強くていい男だったんだがね! 今じゃただの研究者に成り下がった。まあ、後進にはいいものを残したようだがね」

 キクコがモンスターボールを手に取りニヤリと笑う。

「ポケモンは戦わせてこその存在さね。あんただってそう思うからこそ、ここに来たんだろう? 退屈しない戦いにしようじゃないか」

「戦わせてこその存在……それは、違うと思います」

「ほう?」

 レッドは手にとったモンスターボールを見る。脳裏に浮かぶはポケモンだいすきクラブでの笑顔あふれる空間、シオンタウンでポケモンを保護しているフジ老人。

「確かにポケモンバトルはポケモンと心を通わせることのできる競技。だけど、例えバトルをせずともポケモンと強い絆を結んでいる人を俺は知っています」

「けっ。あんたもオーキドみたいな事を言う。ならあたしが改めて教えてあげるよ。ポケモンバトルの真髄をね! 四天王の一人、霊のキクコ!」

『バトル開始!!』

「行きな……ゲンガー!」

「行け! ガラガラ!」

 激戦に湧くスタジアム。その映像を控室外の談話スペースで見ている人物がいる。

 四天王最後の一人にして筆頭、ドラゴン使いのワタル。

 精悍な顔つきで実に楽しそうにレッドの奮戦を見守っている。

「いいトレーナーだな。キクコにも勝つかもしれない。君は見なくていいのかい? 知り合いなんだろう?」

 ワタルはと談話スペースのソファーで寝そべっている人物へと声をかける。

 今日はカンナが挑戦者を駆逐していたために、その人物は先程から待ちくたびれて雑誌をアイマスクに眠りこけている。

「あんたが負けたら起きるよ」

 それだけ言ってまた寝息を立てはじめた。ワタルは苦笑してため息をつき、テレビへと視線を戻す。

(強すぎるのも問題だな。今のチャンピオンに肩を並べる事ができるトレーナー、そんな人物がいるならばここに挑戦に来る前に名を馳せているだろう。かつての大地のサカキのように……)

 ワタルが抱いていた諦観は、今スタジアムへで躍動するレッドを見て、期待へと変わりつつある。

(だが、マサラタウンのレッド。オーキド博士が託したもう一人のポケモントレーナー。彼ならばあるいは……)

 ライバルのいない競技ほどつまらないものはない。そんな感情を抱いてしまった現チャンピオンを脅かす存在が、今の挑戦者かもしれない。

『なんて攻撃だあ! またもガラガラのホネこんぼうがアーボックに炸裂う! これで3枚抜きぃ!』

(まあ、負けてやる気はないがね)

 そろそろポケモン達のウォームアップを始めなければならない。ワタルもまたテレビから目を離し、トレーニングスペースへと向かう。その顔は既に戦意に満ち満ちている。


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