過去ログ - エリカ「あなたが勝つって、信じていますから」
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423:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/09/21(日) 19:21:57.68 ID:Z03kpI3k0
 レッドの密着取材を終えたエニシダは、ポケモンジャーナルへ寄稿するとカントー地方から姿を消したという。彼に近いものはどこか遠くでデカイ事をやりたくなったと聞いているようで、彼の身を案じているものはいないようだった。

 ジムリーダー達は相変わらず多忙な日々を送っている。ポケモンリーグ後、セキチクシティジムリーダーが正式にアンズになり、またトキワジムリーダーは空位となり後任が決まるまでキクコが代行することになった。

 レッドはリーグチャンピオン戴冠後、すぐにチャンピオンの座を返上した。これ自体は大したニュースにはならなかった。リーグチャンピオンは代々、グリーンのように防衛戦を行うためセキエイ高原に残るものと、即返上するものと半々の割合らしい。また新シーズンでは現四天王を含めた多くのトレーナー達がしのぎを削ることになるだろう。

『以上、新チャンピオン、レッド選手の素顔でした。次のニュースです……』

 マサラタウンの自室。レッドは何の気なしにテレビをBGMにし、カーペットの上に座りながらリュック内の荷物を確認していた。モンスターボール6つも腰に付けており、今から準備することは特になくなっている。

「レッドさん」

 そう甘い声を出しながらエリカがレッドへ後ろから抱きつき、レッドの首へ腕を回しながら頬をつけ合う。レッドも微笑みながらエリカの腕に手を添え、顔を気持ちエリカへかたむける。

 エリカの表情はうっとりとしていながらどこか切ない。薄く目を開きながらレッドの頬に唇をつける。

 エリカとレッドは二人きりになるとよく互いの体温を感じ合っていたが、今日は格別エリカが甘える度合いが強い。

「すぐ戻ってくるよ」

「嘘。レッドさんのすぐはどれくらいですか?」

 エリカのすねた声にレッドが困ったように笑う。レッドの旅支度、彼はこれからチャンピオンだけが探検を許されるハナダの洞窟と、セキエイ高原より西にあるシロガネ山を踏破するための準備をしていた。

 またレッドはその踏破が終わったあと、さらに広い世界をめぐることをエリカに告げている。

(わかっていたけれど)

 レッドがそういう選択をすることを、エリカは予測していた。しかし期待はしていなかった。これからはカントー地方で二人で一緒に。期待していたのはそんな夢想。

「離れたくないです」

 エリカがレッドの耳元でささやく。しかし言葉と裏腹に、エリカの心の中で踏ん切りはついていた。レッドを待つ、いつまでも。エリカの囁きはちょっとした意地悪に近い。

 好いた女にそんなことを言われたら当然レッドの心が波立つ。レッドはふと思いつく。

「ハナダの洞窟とシロガネ山の踏破が終わったら、一緒に世界をめぐりたい。エリカさんと一緒に」

 エリカの瞳を正面から見つめ、穏やかに言う。エリカは反射的に「はい」と答えて少し狼狽したが、すぐに視界一面がレッドで埋め尽くされて甘い味を感じ、目を瞑って堪能した。

 レッドは草原の中回想を終え目を開ける。天気は快晴、少し風が強い。

 シロガネ山の山頂が遥か先に見えるこの場所で、レッドは隣のフシギバナに手をついて一つ息をつく。

「さて、準備はいいか皆?」

 レッドの後ろにはピジョットとラッタの姿。今レッドはポケモン界に徐々に浸透しつつあるトリプルバトルの練習も兼ねてシロガネ山に挑もうとしている。

 エリカからの手紙にはいくつもの時代の変遷がレッドへ伝えられている。カスミとの協力の下発表されたポケモンの性格による得意分野の発見や、オス・メスの判別、別地方からのダブル・トリプルバトルの普及、ポケモンのたまごの発見など。既にレッドの最年少優勝記録の偉業なんて風化しつつある。

 しかしレッドは自身の優勝記録なんて少しも気にしてなかったし、むしろ変わりゆく世界が魅力的に見えて仕方がない。

 エリカからの最新の手紙に同封されていた写真。レッドが発見した未知の鉱石によって進化したクサイハナ――キレイハナというらしい――の姿が写っている。

 頂点など過去の話。レッドとポケモン達は際限のない未知の世界へ進むのが楽しみで仕方がない。

「行くぞ! 皆!」

 次代に向かい雄叫びを上げ駆け出す3匹、ラッタ、ピジョット、フシギバナ。

 レッドは誰よりもいち早く、新たな光へ疾風のように駈け出している。

END


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