11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/14(月) 21:51:26.39 ID:PeQPCDngo
優しさだけが取り柄の男だった。
ヘレナがかつての夫を思い出すときに真っ先に浮かぶ文言だ。
その通り優しいだけの頭のゆるい男だった。
壊れた屋根の修繕を頼むとろくに仕事を完遂しないどころか途中で放り出して日向ぼっこをしていたりする。
ヘレナが見つけて下から怒ると――かつて森の王すらも怯えさせた睨みなのだが――意にも介さずこういうのだ。
「ヘレナも上がっておいでよ。この日の光を楽しまないと太陽が気の毒だよ」
もちろん上った。ぶっ叩いて仕事に戻らせるために。
だが上るまでの短い時間に夫はすっかり眠り込んでしまっていて、その寝顔を見ているとなんだか怒る気がなくなってしまうのだった。
この男は一体何なんだろう。
何度そう呆れたことか。
そしてそんな男に引っかかった馬鹿な自分をどれだけ呪ったことか。
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