49:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2014/07/16(水) 18:33:06.96 ID:TmyX6+Eao
胸の奥が鈍く痛む。
指輪は幸せだった日々の残滓で、それを失ったという傷跡で、泣けなかったあの日の後悔だった。
自分はその痛みを綺麗に包んで、しまいこんで、忘れてしまいたかったのだ。
だがヘレナが探していたのもその痛みだった。
「どうりでわたしには見つけられないわけだよ」
ミナはそれをいともたやすく見つけてしまったわけだ。
指輪を胸の上に置いて両手で顔を覆う。
涙は流れない。泣くものか。一滴だってこぼすものか。
だって嬉しいときは泣くべきではないのだから。
「あの子はいい魔女になるね」
毛布の上に上がってきた黒猫を撫でながら言う。
「わたしなんかよりずっといい魔女になるよ」
ニャー、と黒猫は小さく声を漏らした。
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