11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(SSL)[saga]
2014/07/24(木) 14:27:02.39 ID:9uLTT2Jd0
左頬がまだヒリヒリと痛む。
道端に放置された車のサイドガラスで少し確認したら、相当腫れていた。
今日は色々と散々な日だ。
思えばマフラーも忘れ、一人もスカウトできず、まして一人から平手打ちを喰らう――。
駅に向かう道すがら、すれ違う人達の誰もが僕の顔を凝視し、すぐに目線をそらす。
ヒソヒソと、笑い交じりに話す声も聞こえる。
頬を腫らした男が汚いスーツを着て、ダサいラジカセを持って歩いているんだものな。
高木も笑うだろう。僕だってお笑いだ、笑うしかない。
日も傾きかけている。
事務所に帰り着く頃は、もう夜だ。高木も帰っているだろうな。
寒いので、自販機で缶コーヒーを買おう――。
そう思ったけど、財布にはロクに金が残っていなかったのでやめた。
寒さくらい、我慢すればいい。
だのに、この哀しい心だけはどうしようもなかった。
商店街に、聞き覚えのある歌が流れている。
上を向いて歩こう、か――まさに今の僕にピッタリの曲だ。
笑いたいのに、自分の情けなさに泣きたくなる。
鼻唄で、心の内にある負の感情と寒さを紛らわす。
そうしていた時、僕は思わず、歩を止めた。
服飾店のショーウィンドウ――。
その前に立ち、店先に並ぶ洋服を眺める女性に目を奪われたからだ。
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