過去ログ - 阿良々木暦「まゆミミック」
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15: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/07/29(火) 20:31:49.65 ID:YJpQUpwa0


004


「ああ、そういう事だ。どう受け取るかはお前の勝手にしろ」

スマートフォンの通話ボタンを切り、真ん中からへし折ってゴミ箱に捨てる。

翌日、俺は髪を染め直しホテルの自室で椅子に座り、悠然と構えていた。
煙草でも吸えれば格好もつくのだろうが、俺は煙草が嫌いだ。
あんな大金を払った上で寿命を縮めるもの、吸っている奴の気が知れん。
税金を払った上で長すぎる人生を短縮出来ると解釈すればまだ煙草にも価値もあるが、俺にとっては税金を払うことすらも滑稽だ。
俺は業種上、税金なんて払っていないしな。

きい、と静かに入口の扉が開く音が背後から聞こえる。
無論、ホテルの人間が挨拶も無しに客の部屋へ入ってくる筈もない。

椅子を回転させて入口側を向くと、佐久間まゆがいた。
見た感じでは、この上なく冷静な装いだ。
内面はともかく、こんな状況で精神に波風ひとつ立てずにいられるのだとしたら、そいつは相当な大人物か狂人のどちらかだ。

さて、お前はどっちなんだ、佐久間まゆ。

「本当に来たのか。ご苦労なことだ」

佐久間まゆがここに来た理由は明解だ。
先日、阿良々木とすれ違う際、佐久間まゆの鞄に手紙を入れておいた。

内容はこうだ。
『お前の秘密を知っている』と、その一文に加え俺の宿泊するホテルの住所と部屋番号を書いただけ。
文面の元ネタは確かテレビか何かでやっていたと思うが、詳しい事は知らん。

余談だが俺はスリも達者な方だ。
苦労の割に儲けが少ないからやらんが。

「貴方が呼んだんでしょう?」

「呼んではいない。お前が勝手に来たんだろう、佐久間まゆ」

まるで忍野のような言い振りだな、と自嘲的に笑う。

「…………」

「まあ、座れよ。俺はお前がアイドルだろうがただの子供だろうが興味はないが、娘ほどの歳の女を立たせっ放しなのも気分が良くない」

勧めを受け、対面の椅子に腰かける。
俺の見立てが衰えていないのならば、佐久間まゆは俺をどうにかしようとここに来た筈だ。
説得か、懇願か、もしくは口封じかまでは現時点では予想出来ないが。
他の皆が微塵の疑いの素振りすら見せず騙されている中で、唯一俺だけが騙されていないのだから、当たり前だ。



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