過去ログ - 阿良々木暦「まゆミミック」
1- 20
7: ◆8HmEy52dzA[saga]
2014/07/29(火) 19:56:56.76 ID:YJpQUpwa0

「用があるなら早く言え。これでも俺は忙しいんだ」

これは嘘だ。
現在、俺が取り掛かっている仕事はない。
下拵えは各地にしてあるが、そのどれもが今すぐ着手しなければならない類のものではない。
が、暇だからといって忍野と仲良くお茶なんぞは御免だ。
金でも貰わんと割に合わん。

「まあまあ、そんなに邪険にするなよ。何かいいことでもあったのかい?」

「…………」

都合良く店内は図ったかのようにガラガラだ。
無言で席を立ち違う席へ、とも思ったがそれでは何か負けた気がしそうなのでやめた。

「僕だってお前と長話するつもりはないよ。僕は僕で忙しいからね……まあ、話ってのは、いつもの怪異退治の依頼なんだけど」

やはり、か。
臥煙先輩のつてか、忍野が手に負えなかった案件かのどちらかだろう。
こいつは専門家としてはかなり有能な部類に入るが、それでも得手不得手は必ずある。

俺もそうであるように、対怪異にも適材適所というものは存在する。
暴力陰陽師、影縫がその最たる例だ。
あいつと式神である斧乃木の二人は力こそ世界で五本の指に入るであろう人外だが、暴力でしか解決を図れない。
物理攻撃の効かない相手には前提として勝利が存在しないのだ。
ついでに例えるのならば、忍野はオールラウンダーで俺はディフェンダーだ。
ディフェンダーと言っても誰かを護る訳ではない。
俺は戦闘能力こそ低いが逃げることに関しては誰よりも群を抜いていると自覚しているだけだ。

「幾ら払う?」

とりあえずは金だ。
金が無ければ何も始まらん。
どんな汚れ仕事だろうが金さえ見合えば受けるのが俺の流儀だ。
矜恃?
なんだそれは、金になるのか?

「一千万」

「…………!?」

「ちゃんと円だよ」

一瞬、身体が強張る。一千万……?

元々、需要も供給も少ない業界だ。
単価が高くなるのは当然だが、一千万クラスとなるとかなりの広範囲に人的、もしくは環境に被害が及ぶ怪異、ということになる。
忍野の言葉を借りるのなら、バランスを大きく崩す怪異、だ。
例外として余程金回りのいい金持ちでも捕まえた、という可能性もあるが、それならば俺には話を持ってこないだろう。



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
33Res/44.53 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice